映画#44『メメント』
失われた記憶、隠された真実
『ダークナイト』や『インターステラー』といった傑作を世に出した巨匠にして私が愛してやまないクリストファー・ノーランの出世作とも言われるのが、この『メメント』という作品だ。
この作品の中で最も重要なのが主人公が短時間の記憶を忘れてしまうこと。ポイントなのはつい数分前の出来事を忘れてしまうことであるため、自分の名前や遠い過去の記憶は覚えているのだ。
例えばこの記事を書いてる私が主人公だとしよう。
今この文章を書いていても、数分後にはあれ?俺って何の記事を書いてたんだっけ?となってしまうのだ。
だが数時間前に経験した、『メメント』という作品を観たという記憶は保持される。そんな感覚だ。
更に今作のストーリーは、時間を遡って進んでいくという特殊な形を取っている(「時間の逆行」は同じくノーラン監督の作品『TENET』にも通じている)。
この為、そのシーンに主人公が何かしていても「何故こんなことをしているのか」その理由が分からないのだ。我々観客、そして主人公自身にも。
そう、この映画は「記憶を失って自分が何をしているのか分からない」主人公」と「事の顛末が不明瞭で主人公が何をしているのか分からない」観客がリンクしているのだ。こんなストーリー、一体他に誰が思いつくんだ。
今作はなんと自身の妻を殺した犯人を主人公が射殺するシーンからスタートする。そこから物語は遡っていき、何故こうなったのか、経緯は何なのかを紐解いていくのだ。
更にここで今作をより混沌たらしめる要素が登場する。それが物語の節々に挿入されるモノクロのシーンだ。
ここでは主人公が誰かと電話で会話するシーンが続き、カラーの映像とは真逆で通常通りに時間が進んでいく。
「カラーの映像」と「モノクロの映像」…この二つの時系列は繋がっており、ラストシーンにてその全てが明かされる。
カラーの映像における最初のシーンを「物語の終わり」だとすれば、モノクロの映像における最初のシーンは「物語の始まり」なのである。
この二つの映像を交互に流すことで徐々に近づいていき、ラストシーンでようやく一つの物語に収束するのだ。全てを理解した時の開放感、あれは凄まじかった。
この物語を簡易的に言い表すのならばそれは「主人公の終わらない復讐劇」だろう。彼の短時間の記憶を失うという病が治らない限り、彼は永遠に「ジョン・G」なる犯人を追い続けることになる。
タイトルの「Memento」とは「形見、思い出の種」の意を持つ。妻との思い出、失った記憶を記すメモ、プロマイド、全身に彫られたタトゥー。主人公にとっての「形見」は、どれだけ時間が経とうとも彼を縛り続けるだろう。
まとめ
久々にノーラン監督の作品を観たけれどいやもうほんとに何故こんな天才的な作品を作れるんだろうか。一生理解できない気がする。いい意味で。
好きな監督だから!!とかそういう忖度なしで一番好きなサスペンス映画です個人的に。あまりにも繊細かつ緻密すぎて。
敢えて記事には詳しく書かなかったけれど本当によくできたストーリーだと思う。気になった人は是非。難解な作品だけどその分理解できた時の満足感がえぐいので家でじっっっっっくりと鑑賞することを強〜〜〜〜〜くオススメいたします。
それではまた、次の映画にて。
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