映画#95『バイオレント・ナイト』
『Mr.ノーバディ』や『ブレット・トレイン』の87ノース・プロダクションズから、やや遅めなクリスマスプレゼントが到着。
ある裕福な家庭を襲った強盗と、そんな家へプレゼントを届けに訪れたサンタクロースが、血塗られた激闘を繰り広げるバイオレンスアクション。
オープニングはバーにて酒をしこたま飲む、赤と白のコスチュームを身に纏った老人、サンタクロースが「最近の子供は物欲に塗れてやがる」「感謝の気持ちもへったくれもない奴らばかりだ」と愚痴をこぼす所から始まる……
私はここで「あ、この映画絶対おもろいやん」という絶対的な確信に至った。泥酔しながらトナカイ率いるソリに乗り、平然と街にゲロをぶちまけるサンタクロース。最高か。そして挙げ句の果てには家に入っては置いてあるお菓子やら酒やらを平然と掻っ攫うときた。でもしっかりと仕事はしているのが「プロ(?)なんやなぁ〜〜〜」とも。
一方で超がつくほど裕福な家庭ことライトストーン家に、突如として魔の手が忍び寄る。巨額の資産を狙った強盗団が襲撃してきたのだ。死んだ目でプレゼントを届けるサンタさんは、知らず知らずの内に魔の巣窟へと足を踏み入れてしまう。
ここで登場する家族の関係性についてだが……描写が少々不足しているのは正直否めない。更に言うなら悪役の小物感も少し突っかかる。まぁそこは物語の趣旨とはあまり関係ないかなってことで割愛するとして、当然サンタさんと強盗団が鉢合わせ戦闘が繰り広げられることとなる。
このサンタの「身の回りにある小道具や、魔法の袋からランダムに出てくるプレゼントを武器にして応戦する」という戦い方は、同じ製作会社である『ブレット・トレイン』を想起させられる……
がしかし、かの作品で見られたようなスピード感のあるアクションを期待すると肩透かしを喰らうかもしれない。所謂「もっさり&パワフルアクション」が今作の特徴ではあるのだが、それも「サンタさんのガタイの良さ」を活かした結果だと考えれば納得がいく。
さて、劇中では度々ライトストーン家の娘であるトルーディと、サンタさんの会話が行われる。純粋な心を持つトルーディと、子供への失望感に溢れていたサンタさんが徐々に心を打ち解けていく中で、サンタさんの隠されし過去が明らかになっていく。
元々は巨大なハンマーを武器に、多くの人々の脳天を潰してきた凶戦士だったというサンタさん。しかしトルーディはそんなサンタさんの真の姿に恐れることはなく、むしろ「強盗の人たちのケツの穴に石炭をぶち込んでやれ!」とサンタさんに喝をいれる。
怖いもの知らずな「真の意味で」純粋な少女・トルーディ。まさに現代の子供達を象徴する、ある種のシンボル的なキャラクターだなと認識させられると共に、物置小屋で偶然ハンマーを見つけた……いや、見つけてしまったサンタさん。ここからはもう想像がつくだろう。
というわけで、物語後半にして遂に幕を開けるサンタさんの無双タイム。ここからが物語の本番。遂に「バイオレント・ナイト」の始まりだ。サンタさんが大きくハンマーを振りかぶり、敵の脳天を叩き割り、グシャリと生々しい音が響き渡り、鮮血が飛び散り……もうこれだけで爽快感が半端じゃない。
更にはトルーディもお手製のトラップを仕掛け敵に応戦していく。「子供にしては中々エグいこと考えるなぁ……」と、少しゾワッともしたが……最終的にはサンタさん、ひいては家族たちの力により強盗集団は壊滅。凶弾に倒れたと思われていたサンタさんも「サンタさんを信じる」という魔法の力(本人にもよく分かってないらしい)で復活。
子供達に夢を届けるべく、再びクリスマスの夜空に飛び立っていくのだった……。
『ブレット・トレイン』同様、アクションエンタメとしては中々完成度が高い作品のように感じた……が、序盤〜中盤は失速気味だったかな?とも。2時間以内で収められたらもっと良かったのになぁ〜〜という印象。
そして、今作最大の謎にして、最大の欠点。それは……
「何故クリスマスに公開しなかったの!?」
クリスマスに公開するにはもってこいの作風なのにも関わらず、何故公開されたのが次の年の2月なのか……イブに公開された『かがみの孤城』に枠を取られてしまったのだろうか。どちらにせよ凄まじく勿体なく感じた。
また今作は『ホーム・アローン』をオマージュしているのも特徴(更に言えば『ダイ・ハード』も今作との類似点が存在する)。現にトルーディが仕掛けたトラップは、実際に『ホーム・アローン』の主人公が劇中で設置したものと同じなんだそうな。
がしかし、私は『ホーム・アローン』を鑑賞していないためにこのオマージュに気づけなかったのである。ああ勿体ない……自分の知識不足で重要な要素を見逃してしまうのは本当に勿体ない。
もっと色んな作品に触れなければ……と嘆く、絶賛春休み中で暇を持て余しまくってる19歳だった。嘆く暇があったら早く観ろってね。
それではまた、次の映画にて。
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