映画#110『アンタッチャブル』
『ゴッドファーザー』をはじめ、映画……とりわけ一昔前の洋画では比較的十八番とされるジャンルである「ギャング/マフィア」モノ。
正義VS悪という単純明快な「勧善懲悪」的ストーリー、暴力・拷問・流血をはじめとする残酷な描写、轟音と火薬の匂いがスクリーン越しに伝わってくるかのような銃撃戦、そして何よりも作品全体に漂う「渋めな」雰囲気。
そんなマフィアをテーマとしたクライム映画には欠かせない要素を、すべからずいいとこ取りしたかのような作品が『アンタッチャブル』だ。監督は『スカーフェイス』や、後に『ミッション・インポッシブル』を手掛けた奇才、ブライアン・デ・パルマ。
財務省捜査官エリオット・ネスと、その仲間たち3人が手を組み結成されたチーム「アンタッチャブル」と、暗黒街の帝王アル・カポネとの戦いを描く今作、実は実録映画となっておりエリオット・ネスが自伝として描いた『The Untouchable』か原作となっている。
オリジナルのものとして描くのではなく、実際に起こった苛烈な戦いを映画として書き起こす……(多少の改変はあるものの)その様はまさしく、我々が「マフィア」という存在そのものに抱く「マイナスな」イメージを、まるごとそのまま反映させたかのようだ。
「マフィアは女と子供を殺さない??」いやいやそんなもの大間違いだ。彼らは制裁を下すと決めたんなら多少の犠牲は一切厭わない。たとえ1人の少女の命が爆弾によって奪われようとも……
そんなショッキングな展開がオープニングで行われるのだから、きっと私を含めた多くの人々が「勝手に」抱いていたマフィアへのイメージは見事に崩れ去ったことだろう。
反逆者と裏切り者へは死の制裁を。「あ、コイツに常識なんか通用しねーわ」と一目で分かるような、アル・カポネの威圧感満載な立ち振る舞いを見事に演じ切ったロバート・デ・ニーロはさることながら、終盤の階段から乳母車が落ちるシーン(セルゲイ・エイゼンシュテイン監督『戦艦ポチョムキン』のオマージュ)で凄まじく美味しい所を持って行ったジョージ・ストーン、彼を演じたアンディ・ガルシアもまた最高にかっちょいい。
初代ジェームズ・ボンドを演じ、その後スランプ気味だったショーン・コネリーの演技も大きく評価され、後に助演男優賞を受賞している。当然、主演を演じたケビン・コスナーもまた、今作の好評を経て一躍スターへの仲間入りを果たしている。
ただただシンプルかつドライで、それでいて魅せるべき所は抜かりなく魅せていく……今作に凄まじくのめりこめた訳ではないが、デ・パルマ監督の代表作たる所以は十二分に理解できた。
私としてはとにかく、例の階段でのシーンのストーンがカッコ良すぎて……ここで「百発百中の凄腕ガンマン」という設定が回収されるとは思わんやん。本当に美味しい部分持ってったな。笑
それではまた、次の映画にて。
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