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映画#139『モンスターハンター』



『モンスターハンター』(”Monster Hunter”)


監督/脚本:ポール・W・S・アンダーソン
原作:カプコン『モンスターハンター』
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、トニー・ジャー、ティップ・“T.I.”・ハリス、ミーガン・グッド、ディエゴ・ボネータ、ジョシュ・ヘルマン、ジン・アウヨン、ロン・パールマン、他
製作会社:コンスタンティン・フィルム、テンセント・ピクチャーズ、東宝
配給:スクリーン ジェムズ(米国)東宝、東和ピクチャーズ(日本)
公開:2020年12月18日(米国)2021年3月26日(日本)
上映時間:104分
製作国:中国、ドイツ、日本、アメリカ合衆国

Wikipediaより引用

【あらすじ】
消息を絶った偵察小隊の捜索に当たっていたアルテミス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)率いる特殊部隊は、激しい砂嵐に飲み込まれてしまう。砂嵐が去った後、彼らのの目の前に現れたのは、未知なる世界と・・・ありえないサイズの超巨大モンスター!果たして元の世界に戻る方法はあるのか?すべての真実を知るためには、次々襲来する巨大モンスター達を倒し、生き残るしかない。狩るのは人間か?モンスターか!?究極のサバイバルがいま始まる!

Filmarksより抜粋

画像出典:映画.com

自慢ではないが、私はどんな映画も「面白い」と思うことができると自負している。例えその映画が微妙な評価だろうと極端に低評価だろうと、「よっぽど酷くなければ」私は席を立つことなくエンドロールまでその映画と向き合うことができるだろう。

だが今作『モンスターハンター』に関しては本当にダメだ。自分でも不思議に思うほど、私は今作を許容することがどうしてもできなかったのである。


とは言えど、設定などはB級映画感満載だが破茶滅茶に面白い作品たちは多く存在するし、見方によっては今作もそれに該当するだろう。だが、私が今作に対して最も怒りを抱いているのは即ち「モンハンを原作にしている」ということだ。

『失踪した特殊部隊を捜索してたらモンハンの世界へ異世界転生しちゃった件について』

私にとってのモンハンは、私がゲーム好きである所以、即ちルーツとなったシリーズの一つだ。そんなモンハンを劇場の大画面で、しかもハリウッドの大迫力なCGで拝めるだと?当初この話を聞いた時の私の気分は正に有頂天といった所だった………いやまぁ、あらすじを見た時は流石に違和感を感じたが。


実を言うと、今作は一度劇場にて鑑賞済みだ。当然「こんなの私の知ってるモンハンじゃない」と理解に苦しむことになったのだが、モンハンを全く知らない人には十分楽しめそうだしまぁいいか、といった具合に湧き出てきた罵詈雑言をぐっと抑えることができたのだが………

元ネタとなったのはシリーズ史上最高の売上を記録した『モンスターハンターワールド』。

今回、配信媒体にて二度目の鑑賞するにあたって「これはモンハンの名を被った何かだ」「最近流行りのマルチバースにおけるモンハンのもう一つの姿なんだ」と自分に言い聞かせまくったのだが、何故だか私は沸々と己の内側から湧いてくる怒りを隠すことができなかった。この映画が偉そうに『モンスターハンター』などというタイトルを有していることを許せなかったのである。


最初からネガティブな意見全開でもアレなので、今作における評価すべき点を先に述べておこう………ズバリそれは、ハリウッドのCGで描かれるモンスターたちの迫力だ。ストーリーは陳腐極まりないが、CGに関しては流石ハリウッドといった所。

実は映画に登場する個体はディアブロス”亜種”。原種は黄土色の外殻を持つが、亜種は黒の外殻を身に纏っている。

今作では主な大型モンスター(所謂ボスモンスター的なヤツ)として「角竜ディアブロス」「火竜リオレウス」が登場するのだが、原作ファンからすれば「これが俺らの見たかったディアブロスとリオレウスだよ!!」といった感じ。モンスターが人間相手に無双している姿は恐ろしさも相まって迫力抜群であり、ゲーム本編ではあまり見られない「大型モンスターの脅威」を存分に体感することができた。

天を覆い尽くす程の翼で自在に空を飛び回り、灼熱の炎で全てを破壊し尽くす姿は正に「空の王者」。

特にリオレウスは『モンハン』そのものを代表するモンスターとしても今作のラスボスとしても遜色ない程の大活躍を見せている。ゲームプレイヤー間にて数々の蔑称をつけられてきたリオレウスが、劇場版モンハンという大舞台にてようやく報われたか………と無性に感動してしまうほどの勇姿を我々に見せつけてくれた彼は、ある意味今作におけるMVPなのかもしれない。

またモンスターの鳴き声が原作と同じなのも原作ファンにとっては粋な演出だ。やはりディアブロスはあの特徴的な鳴き声でなくては。


んでここからは個人的に「ふざけんじゃねぇ」と思った部分を語っていくのだが………一つ思うのが、『モンハン』を全く知らない人が今作を観たら果たしてどういった感想が出てくるのだろうか?意外にも高評価を得ることになるのか、或いはそれでも尚否定的な意見が続出するのか………一度、怒りで煮え滾る脳味噌を一旦瞬間冷凍して客観的に考えてみた結果、後者よりも前者の方が若干多くなるのではないか?という結論を導き出した。

確かによくよく考えてみれば、私が今作に対し抱いている怒りは全て「原作が大好きだから」であり、仮に私が『モンハン』を全く知らずに今作を鑑賞していたとすれば、もしかすると評価はひっくり返っていたかもしれない。

だが私は他人の評価を踏まえて自分の評価を曲げてしまうほど退屈な人間ではない。モンハンの生みの親であるカプコンがしっかりと製作に関わっている以上、今作は「モンハンの映画」であることに変わりない。それなのに何故、こうも残念な出来になってしまったのか?ハッキリ言おう、私の怒りが冷めることはない。


まず大前提として、異世界転生モノとモンハンを絡めるという主軸自体が間違いだったように思える。何故世界観をモンハンの世界だけに統一しなかったのか?主人公のアルテミスも普通にモンハンの世界で暮らす住民でよかったのではなかろうか。

というかそもそも、モンハンの世界におけるハンターの設定も何だか妙だ。「モンスターと戦うために訓練された戦士」………いや確かにその通りではあるのだが、ではハンターズギルドの存在は?他のハンターはどんな生活を営んでいるのか?その描写が全くないようじゃ、まるで『モンハン』の世界観を表現できているとは言えない………

言うなればパチモン、紛い物、贋作めいた世界観だ(更に言うならトニー・ジャーをハンター役としてキャスティングした意図もよくわからない。まさかアルテミスとの格闘シーンを撮るためだけに採用された?いやいやそんなバカな………)。


他にも、何故米軍の銃弾がモンスターに一切効かなくてモンハンの世界の武器が効くのか、など世界観に対する疑問は尽きないが………今作は総じて「惜しい」作品だ。ストーリーに関してはお粗末極まりないが、モンスターの雄大さ・恐ろしさの描写は間違いなく原作を超えるクオリティだ。

言うなれば「痒い所に手が届かない」感じ………我々の求める『モンハン』と監督の描きたい『モンハン』に致命的な軋轢があったからこそ、私含むファンは怒り心頭という結果になってしまったのだろう。

せめて、せめてモンハンのテーマ曲である『英雄の証』を流して欲しかった!!なのに流れるのは妙にSFチックなBGMばかり………誠に遺憾である。


しかし、改めて考えてみると難しい所ではある。何せ今作は、ファンにとっては駄作だがそうでない人には普通にエンタメ映画として楽しめるからだ。むしろ今作を鑑賞したことで原作であるゲームの方にも興味が湧き、実際に購入しプレイしてみたという人も一定数いるだろう。

実際にゲームを遊んでみれば、この映画は「良くも悪くも」別の映画に見えてくる筈。

故に今作をこうもボロクソに批判するとなると、少なからず後ろめたさを感じてしまうのである。私はファンの目線に立っているつもりで今作に物申している訳だが、果たしてそうでない人はどういった感想を抱くのだろうか………後ろめたいからと言って私が私の意見を曲げることは無いが。


なんというか、私は基本的に「こんなのクソ映画だ!!!!!」と怒りを顕にすることはあまりない為、今作へここまで怒りを抱いたのは正直自分でもビックリしている。自分の知らない自分を知ることができたと言うべきか、或いは作品の細部に目を凝らさずただブチギレているだけに過ぎないのか………

いずれにせよ本当に惜しい映画だ。できればモンスターの造形等はそのままにストーリーなどを一新したver.を観てみたい所存。

(↓こんな感じの記事を書く程にはモンハンが好きです。ご参考(?)までに。)

それではまた、次の映画にて。

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