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映画#83『非常宣言』
『非常宣言』
(”Emergency Declaration")
監督:ハン・ジェリム
出演:ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン、キム・ナムギル、イム・シワン、キム・ソジン、パク・ヘジュン、他
配給:クロックワークス
公開:2023年1月6日(日本)
上映時間:141分
製作国:韓国
【あらすじ】
娘とハワイへ向かう飛行機恐怖症のジェイ・ヒョク(イ・ビョンホン)は、空港で執拗にふたりにつきまとう謎の若い男(イム・シワン)が、同じ便に搭乗したことを知り不安が よぎる。KI501便はハワイに向け飛び立つが、離陸後間もなくして、1人の乗客男性が死亡。直後に、次々と乗客が原因不明で死亡し、KI501便は恐怖とパニック の渦に包まれていく。一方、地上では、妻とのハワイ旅行をキャンセルしたベテラン刑事のク・イノ(ソン・ガンホ)が警察署にいた。飛行機へのウイルス・テロの犯行予告動画がアップされ、捜査を開始するが、その飛行機は妻が搭乗した便だったことを知る。また、ウイルス・テロの知らせを受けた運輸大臣のスッキ(チョン・ドヨン)は、 緊急着陸のために国内外に交渉を開始する。副操縦士のヒョンス(キム・ナムギル)は、乗客の命を守るため奮闘するが、飛行を続けるタイムリミットが迫り、「非常事態宣言」を発動。しかし、機体はついに操縦不能となり、地上へと急降下していく。見えないウイルスによる恐怖と、墜落の恐怖。高度1万メートル上空の愛する人 を救う方法はあるのか—?!
『パラサイト 半地下の家族』ぶりに劇場で観た韓国映画。
飛行機の中で致死性の高いウイルスがばら撒かれバイオテロが発生。
一種の生物兵器と化した飛行機と乗客を救うべく、様々な人々が奮闘するパニック・スリラー映画。
友人と一緒に観に行った訳だが、鑑賞後まさしくど肝を抜かれたような感覚に陥った。
作品全体に満ち満ちた緊迫感や恐怖感、俳優の演技によって醸し出される喜怒哀楽と言った感情。
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それらが直に伝わってきたことにより、まるで我々もその渦中にいるかのような感覚に襲われた。
特に中盤〜終盤にかけての展開において、私は思わず両手を握り合わせ神に縋る思いで鑑賞していた。
(感情が追いつかないとはまさしくこのことだろう……)
韓国映画界を代表するソン・ガンホとイ・ビョンホンが共演を果たしたということで、その演技は迫真の勢いだった。
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得体の知れない恐怖感に満ちた演技に、思わず背中がゾクリ。
(さすが韓国というべきか……これを機に韓国映画も触れてみようかなと思った)
またその他脇役を含めた全員の演技もまた素晴らしく……
特に胸を打たれたのは、ウイルスに感染した飛行機の乗客全員が「家族を守るため」に、飛行機を降りないと決意するシーン。
(家族とビデオ通話で最後の会話を交わすシーンは、涙なしでは見られない……今でも思い出すと、胸が締め付けられる)
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「ウイルスという見えない恐怖に怯える飛行機の中の乗客たち」
「乗客たちを救うべく地上で奮闘する韓国政府」
この二つの視点で物語は進んでいく訳だが、個人的に何よりも印象的だったのは「他国の反応」だ。
作中では、飛行機本来の目的地であるアメリカと、領空の近くにあった日本に協力を要請する。
だがここで、どうしようもない問題が発生する……
それは「生物兵器となった飛行機を、自分の国に降ろせるか否か」という問題。
当然、飛行機の乗客たちに罪はない。更に飛行機も、いずれは燃料が尽き墜落してしまう。
当然、多くは「一刻も早く乗客たちを降ろし治療するべき」と思うだろう。
だがもし治療薬が効かなかったら?
上陸した瞬間に他国にウイルスが蔓延したら?
「最悪の可能性」がわずか0.1%の確率だったとしても、国はそれを全力で避けねばならない。
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そんなわけで、他国は飛行機の臨時着陸を断ってしまうのである。
「そりゃ酷すぎんだろ!!」と思うのは当然だが……悲しいことに、現実的に考えればそれが妥当なのだ。
(まぁ流石に、領空に侵入してきた飛行機を撃墜すべく日本の自衛隊が出動するのは、些か度が過ぎていると思うが……)
未曾有のバイオテロがもたらす緊迫と恐怖。
それを韓国のみならず、海の向こうの国まで描いていた点は、今作の中でもかなり評価できる部分だと私は思う。
また序盤の「何かがこの飛行機内で起こっている」と、徐々に不穏な空気になっていく様は、非常に自然かつ異質であった。
しかしだからこそ、終盤の展開に違和感を感じてしまった部分もある。
或いは「ちょっと都合良すぎない??」と思ってしまうシーンも……
なぜ飛行機の燃料がないと言っていたのに、韓国の空港まで飛べたのか。
なぜ今まで沈黙を保っていたウイルス開発会社がすんなりと白旗を上げたのか……などなど。
今年初の映画……ではないものの、1月にしてとんでもないものを観てしまった、そんな気分。
(なんだか『ノースマン』が霞んで見えてきてしまった。ロバート・エガースには悪いが……)
こういうかけがえのない出会いがあるからこそ、映画はやめられない。
それではまた、次の映画にて。
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