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映画#116『ウォッチメン』

『ウォッチメン』(”Watchmen”)

監督:ザック・スナイダー
原作:デイヴ・ギボンス、アラン・ムーア『ウォッチメン』
出演:マリン・アッカーマン、ビリー・クラダップ、マシュー・グッド、ジャッキー・アール・ヘイリー、ジェフリー・ディーン・モーガン、パトリック・ウィルソン、他
製作会社:ワーナー・ブラザース、パラマウント・ピクチャーズ、レジェンダリー・ピクチャーズ、DCコミックス、ローレンス・ゴードン・プロダクションズ
配給:ワーナー・ブラザーズ(米国)パラマウント・ピクチャーズ(日本)
公開:2009年3月6日(米国)3月28日(日本)
上映時間:163分
製作国:アメリカ合衆国

Wikipediaより引用

【あらすじ】
ベトナム戦争、キューバ危機など数々の事件の陰には、人々を見守る“ウォッチメン”と呼ばれる監視者の存在があった。しかし、1985年のニューヨーク、米ソ間の緊迫状態が続く中、政府により活動が禁じられていたウォッチメンの1人、エドワード・ブレイクが暗殺され……。

映画.comより抜粋

画像出典:映画.com

「アメコミと社会派ドラマの融合」という、あまりにもユニークすぎる路線を征く異色のアメコミ映画。アメリカを長らく「監視」し続け、しかし現在は新たなる法律により解散まで追い込まれることとなったヒーローチーム「ウォッチメン」、その元メンバーの内1人が暗殺されたことから物語が始まる。

ヒーローとしての立場を失ったメンバーたちが、身内の死をきっかけに動き出していく様を描いた群像劇。今や綺麗さっぱりとヒーロー稼業から足を洗った鳥類学者「ナイトオウル」、人類の最先端技術を掌握する超人科学者「Dr.マンハッタン」、世界最大の企業を率いる「世界で最も賢い男」こと「オジマンディアス」。

ブルース・ウェインという表の顔を捨て、悪を罰することに躊躇がなくなったバットマン……みたいな感じ。

兎にも角にも個性的すぎるメンツが勢揃いな中、法律の裏をかき今も尚ヒーロー活動を行う私刑執行人「ロールシャッハ」は、他のメンバーと比べ多大なる活躍を見せていたと言える(彼は今作のみならず原作においても、所謂「狂言回し」的な存在)。


前半は「ウォッチメン」の現在と過去、それから各キャラクターたちの背景や過去が語られるのだが……個人的にはここがまぁ〜〜〜退屈で仕方なかった。まだ物語が始まって間もないが故に過去の出来事を見せられても特段何かを感じることもなく、ただただ淡々とストーリーが流れていく……そんな感じ。

個性豊かな主要人物たちが揃っているのにも関わらず、これは少々勿体無い気がしてならない……せめて少しぐらいはヒーロー映画十八番のアクションシーンを入れてみても良かったのではないかとすら思う。


ところが今作、後半に突入した途端に急展開を迎える。重い腰を上げヒーロー活動を再開するナイトオウルたち、ハメられ逮捕されるロールシャッハ、超越者であるが故に人を理解できなくなったDr.マンハッタン。後半にしてようやく動き始めた物語、これを「待ってました」と言うべきか「いや遅ぇよ」と言うべきか……

どちらにせよ、その後のロールシャッハ救出からの真の黒幕を倒しに行く、という展開は実にヒーロー映画的だ。最後の最後でようやくヒーロー映画らしさを醸し出してきた『ウォッチメン』、しかし今作の独特な世界観はラストシーンにて文字通りの大爆発を起こす。

真の黒幕……オジマンディアスは多大なる犠牲を払いDr.マンハッタンを巨悪へと仕立て上げ、人類を団結させることで世界を救ったのだった。これにて恒久的な世界平和が実現したが、その実態を知るのはウォッチメン監視者のみ。妥協を一切許さないロールシャッハが世に真実を暴露しようとして、最終的にDr.マンハッタンの手にかけられたのも何だか皮肉めいている。


ヒーロー×社会派ドラマ、という歪なジャンルは最近だと『仮面ライダーBLACK SUN』と共通している。

「社会から排斥する側、される側」を描くというのは両作の共通点だが、『仮面ライダー〜』の方はやはりリブート作品というのもあって戦闘シーンなどが凝っている部分が多く見られ、全体的に陰鬱なドラマパートの随所随所に差し込まれた特撮的な戦闘シーンがより際立っていた。

だが、それに比べ『ウォッチメン』は……うーん、どうやら私は今作を観るにあたって「ヒーロー映画」という主観を捨てる必要がありそうだ。

しかしながら、ザック監督のヒーロー映画に社会情勢という要素を混ぜるというスタイル(MCUよりもより陰鬱に、ダークに)は、後の『マン・オブ・スティール』や『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』でも見受けられる。見方を変えれば、このやり方はザック監督にしかできないヒーロー像の描き方なのかもしれない……。

それではまた、次の映画にて。

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