僕は結婚式を挙げたくない(後編)
前編の続き
その日は婚約したばかりの彼女と車で出かけていた。
年末のせわしなさが車の量にも反映されているのか、道路は渋滞に近い混み方をしている。
信号で停まった時を見計らって、僕は結婚式について切り出した。
「そういえば、式どうしよっか?」
しばしの沈黙
彼女はなんと言うだろうか……
婚約したばかりだし……
結婚式のことで対立したくない……
「うーん挙げたくないかなぁ」
と助手席の彼女が言った。
その瞬間、私は心の中でガッツポーズをした。
これであの拷問のような、罰ゲームのようなイベントを回避できる!!!
やった!やった!ばんざーい!(結婚式を楽しんだ人ごめんなさい)
「そうか、俺も式は挙げたくないんだよね、意見が一緒でよかったよ~!」
「私、ウェディングドレスは着たくないの。でも着物は着たいわね。」
「ん?」
「せっかくの結婚だし、華やかな着物は着てみたいわ。」
「え?それはどういう……?」
「結婚式は挙げなくていいけど、結婚の記念に写真は撮りたいと思っているの。できれば和装がいいな。」
……
……
……
僕は再び心のなかでガッツポーズをした。
「いいね!式はいいけど写真撮ろうよ!」
僕は結婚式を挙げたくない。
でも、写真は撮りたいと思っていたのだ。
1年近く前から準備を始め、たった数時間のために数百万円かける結婚式の必要性は疑問に感じていたのだけど、2人でちゃんとした衣装を着て撮影してもらい、婚約入籍当時の姿を写真という形で残す記念撮影は是非したいと思っていた。
その意見が細かい部分で一致して、すごく嬉しくなったのを覚えている。
信号が青に変わり、僕はアクセルを踏み込んで車を発進させた。
この日のハンドルはやけに軽かったのを覚えている。
数カ月後、新型コロナで非常事態宣言が出る直前に僕たち二人は神社で一生の記念になる写真を撮影することができた。
僕も七五三以来の袴を着てテンションが上がって楽しい一日だった。
しかしその後、結婚式については事情が変わってきた。
僕は内祝いを持ってお互いの親戚の家に結婚報告して終わりにするのが良いと思っていた。
だがそれから二転三転し、両家の顔合わせを兼ねた小規模の食事会をしようということに落ち着いた。
それでも結婚式とは比べ物にならないほど準備に手間もかからず、美味しい料理を食べることがメインの集まりになりそうなので、僕は気が楽である。
美味しいご飯をみんなで食べることができたらそれはそれで幸せな日になるだろう。
僕は結婚式を挙げたくない、でも楽しいことは大好きなのだ。
追記
神社での写真撮影と食事会の話は改めてnoteを書きたいと思います。