クリスマスの夜

百貨店の匂い身に纏って
あの子は通りを駆けていく　
街路樹が青く燃えている
約束の時間まであともう少し

婦人科の坂道を下って
女の子は路地に消えていく
神様なんてこの世界にいないと知る　
制服のスカート　夜風にゆらゆら

今日はロビーにツリーが飾られるんだよ
それだけで嬉しくなったよ　
真っ白のベッドの上で
少女は夢中で日記を書いてる

渋滞の列の先を見つめて
僕はハンドルから手を離した
カーブする湾岸線のむこうに
柔らかな光が灯っている

もう2度と元に戻らない世界で暮らしている
時々そんなことを忘れそうになる
君からの返事はこない　
サイドシートに光と影が揺れている

男は眠る場所を捜している
衛星のメーデーは聞こえても何もできない
コンビニの灰皿　火種はまだ残っている
でも大学病院の電気は今夜も誰一人待たない

バックミラーにふるさとの夜が映っている
テーブルを囲んでみんなで笑い合っている
何を得て何をなくしてきたんだろう
何を壊して何に壊されてきたんだろう

百貨店の匂い身に纏って
あの子は通りを駆けていく　
街路樹が青く燃えている　
約束の時間まであともう少し