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『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義』 吉森 保 #君羅文庫

ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅先生の共同研究者であり、オートファジー研究で世界の最前線を走るトップランナー吉森保先生によるわかりやすい生命科学講義な1冊

細胞の中のものを包み込み分解するオートファジー。

人間が恒常性を維持するためにあえて”壊す"オートファジーを20年に一度の式年遷宮によりピカピカを保つ伊勢神宮に例えたのはとってもわかりやすかった。

壊すことで生命を維持する。面白い仕組みです。

オートファジーについてわかりやすく知れるのが魅力であるのは間違いありませんが、この本の魅力はむしろ前半にあると言ってもいい。

本書の第1章は「科学的思考を身につける」です。科学とは、真実かどうかを判別する便利な装置ではなくて、真実に近づくための仮説を作る営みであり、確からしい仮説をどんどん良いものにしていこうとしているのだと知る。
これは身体に絶対良い!などと断定する人は、科学的に怪しいと判断するとも書かれています。

ある科学的検証結果と自分の体験がうまく「相関」した人は、そこに「因果関係」があると信じ、その説をうまく言っている人の言葉を信じようとするでしょう。
しかし、科学で因果関係を示すのはとっても難しい。そこを知らずに信じたい人の言葉だけを信じすぎるのは問題だと思います。

本書の第1章を読むことで、一部の相関関係だけでなく、検証がどの程度あり、因果関係についてはどうなのか?も考えられるようになると、ある情報に当たった時にじぶんで立ち止まって理屈で考えられるようになるはずです。

そのような科学的思考を身につけることを本の前半で示してくれているのが本書の魅力の一つではないでしょうか?

科学的思考については以前、君羅文庫で紹介した『若い読者に贈る生物学講義 感動する生命のはなし』でも言及されています。

どちらも良い本ですので、最初の方から読んでみると良いと思います〜

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