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366日紡ぐ【夜のうた】

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2023年3月の記事一覧

366日紡ぐ「夜のうた」 3月3日「変わらず」

366日紡ぐ「夜のうた」 3月3日「変わらず」

雛が生まれてもう幾年が経った
それでも雛は雛で
それでも夜は夜で
もうずっと同じままでいる

366日紡ぐ「夜のうた」 3月4日「光」

366日紡ぐ「夜のうた」 3月4日「光」

飛んだ鳥のくちばしに
月明かりの色が映って
今日も一日が終わる

366日紡ぐ「夜のうた」 3月5日「本」

366日紡ぐ「夜のうた」 3月5日「本」

誰かがいなくなっても忘れてしまっても
思いだけは心に在って
繋がっていられたらいいなと思う
深夜、寝静まった頃に
ページがめくられるように

366日紡ぐ「夜のうた」 3月6日「傍に」

366日紡ぐ「夜のうた」 3月6日「傍に」

窓際に座って夜を眺めている
その姿を薄暗い景色が見ている

ランタンが光る
闇も仲間だというように

366日紡ぐ「夜のうた」 3月7日「うた」

366日紡ぐ「夜のうた」 3月7日「うた」

なんでもないことを
いつもうたっている
そんな日々の中で
夜を迎えたい

366日紡ぐ「夜のうた」 3月8日「猟師」

366日紡ぐ「夜のうた」 3月8日「猟師」

網を持っている猟師が
今宵も夜を捕まえようとしている
毎夜上手くいかないのに
いつも楽しそうなのは
叶わないのが悔しいのではなく
その為に考えることが好きだからだ

366日紡ぐ「夜のうた」 3月9日「贈る」

366日紡ぐ「夜のうた」 3月9日「贈る」

誰かのための夜に
君は花束を渡して
誰かが喜んでくれたらいいなと
思っている

366日紡ぐ「夜のうた」 3月10日「瞼」

366日紡ぐ「夜のうた」 3月10日「瞼」

夜と名付けられた犬がいた
もう随分と歳を取った犬だ
夜はとてもやさしくて穏やかで
理想の夜のような存在だった
目をつむるとその瞼の裏では
無数の夜が浮かんでいるなんてことは
誰も知らない

366日紡ぐ「夜のうた」 3月11日「形をなくす」

366日紡ぐ「夜のうた」 3月11日「形をなくす」

「キラキラした日にはケーキを食べよう」
そう君が言うのでケーキを買った
「美味しい!美味しい!」
そう君が言うので僕はうれしくなった
そんな二人だけの夜
ついさっきまであった孤独は
なんだったのかわからなくなって

366日紡ぐ「夜のうた」 3月12日「倖せ」

366日紡ぐ「夜のうた」 3月12日「倖せ」

魔法のランプから出てきたのは綺麗な夜空
「あなたの願いを叶えましょう。ただし夜にしか叶いません」
「あの子が泣かなくてもいい夜を作ってください」
そう僕は言ってこの街を離れた
あの子が泣いていないのかはわからないし
代わりに僕が泣くようになったのかもしれない
それでも

366日紡ぐ【夜のうた】 3月13日「無常」

366日紡ぐ【夜のうた】 3月13日「無常」

たちがわるい
うみのけしきを
のこすことなく
るてんしていく
よるのうた