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生まれ変わったらプロバスケットボール選手だった件②

第2話 Beat Athlete Online

※この物語はフィクションです
※登場するキャラクター名、団体名など「あれ? それって・・・」と思われるものもあるかも知れませんが気のせいです
※寛容な心でお読みください

前回までのあらすじ
突如雷にうたれ死亡したプロバスケットボールチーム横浜ビートル・セイラーズの社長・日丼にちどんコタローは類まれなるバスケスキルを持つ結城ゆうきカームラとして転生した。カームラの願いはただ一つ。横浜ビートル・セイラーズを自らの手で常勝チームに導くこと。22年の月日を経てプロバスケットボール選手となったカームラはβリーグ制覇を目指すべく、同じく天才バスケットボーラーである兄・結城トガピが所属する千葉ゲッツとの一戦に臨んだ。

結城ゆうき対決」として世間をにぎわせた横浜ビートル・セイラーズVS千葉ゲッツの一戦は1勝1敗でたがいに星を分ける結果となった。

「いやぁそれにしても強かったなぁ横浜🤩まさか俺たち千葉が1敗するとは思わなかったよ😢まあ俺が絶不調だったのが一番の原因だけどな🤣」

試合翌日の朝、トガピ兄さんが朝食の魚肉ソーセージをほおばりながら俺に話しかける。

「俺知っているぜ。兄さんの調子が悪かったのって、試合前日に朝4時までBeat Athlete Onlineをやって寝不足だったからだろ」
「ははばれてたか🤣つい夢中になっちゃってな😍」

Beat Athlete Online、通称「BAO」はストリートバスケをテーマにしたフルドライブ型のVRMMOスポーツアクションゲームだ。一昨年の秋にローンチし人気爆発。全身の感覚をゲームとリンクさせるフルドライブ機能は世界中のゲーマーを夢中にした。そう、あの事件が起こるまでは・・

「トガピ兄さん、わかっていると思うけどあのゲームは・・」
「ああもちろんフルドライブ機能はオフにしているよ😉」

大人気となっていた「BAO」だが、ある日突然ゲーム世界にフルドライブしていたプレイヤーの意識がもどらなくなるといった事件が起きた。しかもプレイヤーの意識をゲームとリンクさせているヘッドセットを無理やりとろうとするとショック死してしまうのだ。

そして、俺たちの妹も「BAO」をプレイし、意識がもどらなっくなったプレイヤーの一人だ。

妹の名前はアースナ。高校1年生の彼女は俺たち兄弟と同様にバスケの才能に恵まれ、高校のバスケ部ではその素早さから「閃光」の二つ名でよばれている。兄バカではないが器量も良く男子からの人気も高い自慢の妹だ。

そんなアースナが「BAO」をプレイしゲームの世界にとらわれてから1年以上経つ。

「アースナを助けに行こう🤩」
トガピ兄さんが急に立ち上がり言う。
「助けるって・・どうやって?」
「俺たちもフルドライブ機能でBAOの世界に入り込むんだ🤔なぁーに行けばなんとかなるもんさ🤣」

あいかわらずトガピ兄さんは巻き込み型のトリックスターだな、と俺は嘆息した。だが・・答えはもちろんYESだ。

「よし、ちょうどバイウィークだしアースナを助けに行こう!」


そしてトガピ兄さんと俺はBAOにフルドライブしてアースナを助けに行った。



「トガピ兄さんにカームラ兄さん?!どうしてここに・・」

BAOにフルドライブしてすぐさまアースナに遭遇した。ラッキーだった。

「アースナ🤩お前を助けに来たんだ😜いっしょに現実の世界へと戻ろう🤣」

手をひくトガピ兄さんにアースナはこの世界のルールを説明し、戻りたくても戻れないことを伝えた。この世界のルールは ↓ である

・プレイヤーたちは5人でバスケチームを組みNPCのチームと対戦する
・ラスボスチームに勝ったらゲームクリアで、とらわれているプレイヤーたちは解放される
・ゲームに負けたら死亡。現実でも死亡する

「マジか・・デスゲームじゃないか」
俺はトガピ兄さんの唐突な思いつきに安易にのってしまったことを心底後悔した。だが俺はすでに一度死んで生まれ変わった身。人間死んだ気になればなんだってできる。

「よし、ラスボスチームと対戦だ。見事勝利してこんな理不尽な世界から抜け出してやる」

俺はゲームはあまり得意な方ではないが、これはバスケのゲームだ。バスケということであれば話は別だ。ましてや天才プレイヤーの兄・結城トガピもいる。アースナだって閃光と呼ばれるほどスピードに長けたバスケプレイヤーだ。俺たち3人がチームを組めば無敵。デスゲーム相手だって勝利してみせる。

だが、ここで俺はものすごく重要なことに気がついた。
「プレイヤーが二人足りない・・」

落胆する俺たち3人のそばに近づく2つの影が見えた


「プレイヤーが足りないようですね。皆さんそれぞれ凄腕のバスケプレイヤーとお見受けしました。よろしければボクたちをチームに加えていただけませんか?」
「あなたは?!もしや・・」

驚き顔のアースナは続けて言う。
「あなたはもしやcourageカレッジさんでは?!」

アースナが言うには、カレッジと名乗るプレイヤーは、『BAO』の世界で知らない人はいない天才プレイヤーであり、そのオリジナルバスケスキル(OBS)は1回の跳躍でダンクを11回連続で叩き込み22点獲得するといったものであり、Beat Athlete Online史上最強のOBSとして知られている。

「それってバイオレーションじゃ・・グフッ」
俺がつぶやくやいなや、カレッジを尊敬するアースナの腹パンが飛んできた。
「カレッジさんが仲間になってくれるのなら大歓迎です!ぜひ私たちのチームに加わってください」
アースナは即答した。

こうしてカレッジとその仲間で現実世界では声優をやっている藍井ユウキが俺たちのチームに加わった。

「チーム名はどうする🤔」トガピ兄さんが言う。

「私にいい考えがあるの! 私たち兄妹は結城トガピ、結城カームラ、結城アースナで3人とも『結城ゆうき』じゃない。そしてカレッジさんのプレイヤーネームは=勇気ゆうきの意味よね。藍井さんもユウキで偶然にも『ゆうき』が5人。これはもう『チーム・カレッジ』でいいんじゃない?」
アースナが目をかがやかせ言う。おお、こんな偶然もあるのか。

「チーム・カレッジはさすがにボクが恥ずかしいな。そうしたらこんなのはどうかな?」
カレッジが提案したのが

BE COURAGEOUS(ビー・カレイジャス)

「ちょっとアレンジしてみた。カレイジャス=勇気ある、勇敢な にBEを加えて『どんな時でも勇気をもって勇敢でいこう』って意味さ。勇気ゆうきつながりのボクたちにピッタリじゃない?」

ビー・カレイジャスか・・・うん、いいチーム名じゃないか。

こうしてチーム名も決まり、俺たちはゲームクリア=この世界からの脱出をかけラスボスチームと対戦することになった。


「なぜ・・あなたがここに・・」
ラスボスチームとの対戦前、相手チームのメンバーを見たアースナは絶句した。

「知り合いなのか?」
俺の問いかけにアースナが答える。

「ええ。クオーター終わりに100%ブザービーターを決めることから『ビーター』の異名を持つ天才プレイヤーのキリットくん。そして私の夫よ」
「え?! お前、結婚してたの?」
「あ、うん・・この世界で、だけど」

まさかアースナが結婚していたとは驚きだが、このキリットという男がただものではないことはわかる。

そうこうしているうちに試合が始まった。俺たちBE COURAGEOUSは全員身長が低いもののスピードで相手をかく乱し、得点を積み上げる。25対20とリードして1クオーターを終えた。ちなみにキリットはしっかりとブザービーターを決めてきた。やはりあいつは要注意だ。

相手はラスボスチーム。2クオーターではすかさず修正をしてきて、俺たちを圧倒する。なにせキリット以外のメンバーがゴブリンやスカルリーパー、ケルベロス、ミノタウルスといったフィジカルに恵まれた面々で、パワー勝負をしかけてきたのだ。特にやっかいなのがその体格を生かしたスクリーンプレイで、俺たちはトップからのピック&ロールにことごとくやられた。

オフィシャルタイムアウト時にカレッジが指示する。
「あのスクリーンはちょっとやっかいだね。これからはオールスイッチで対応しよう」
「オールスイッチ・・? それはちょっと・・」
俺は思わず不満を口にしてしまった。
「カームラ?どうしたの? Beat Athlete Onlineではスイッチは定番の戦法だよ?」
「いや、現実世界のチームがSNSで『安易にスイッチするな』って叩かれてるから、つい・・」
「それはお気の毒様だけど、ここはオールスイッチでいこう」

カレッジの言う通り俺たちはスイッチを駆使することで徐々にペースを取り戻していき、前半は50対50の同点で終えた。2クオーター終わりもキリットはきっちりブザービーターを決めてきた。


第3クオーターからは一進一退の死闘となった。

「アースナ、スイッチ!」
「カームラお兄ちゃん、スイッチ」
「スイッチ」「スイッチ」「スイッチ!」

いたるところでスイッチを行い、相手の猛攻をしのぐ。
俺とトガピ兄さんがハンドラーとしてゲームをコントロールし、エースのカレッジが得点を重ねる。相手に疲れが見えてきたこともあり、閃光・アースナの速攻もきれいに決まる。ひとつ誤算なのが藍井ユウキがことあるごとに審判に「こんなの絶対におかしいよ」と不平を言い、審判の印象が悪いことだ。

膠着状態を破ったのはあの男だった。
「みんな、注意して。キリットくんの『あれ』がくるわ」
「あれ、って?」
「キリットくんのOBS・・普通の人は片手でしかドリブルをつけないけど、彼は・・彼のOBSは両手同時にドリブルをつくことができるの」

それってダブルドリブルでは、とも思ったがなにやらすごい技なのだろう。

キリットがものすごい形相でせまってきた。
「スタァアアア ブーストオオオオ ストリーミング!!」
キリットの体を虹色のオーラがとりまく。そして発動するOBS・・・・両手ドリブル!!!

「HEY、審判😮ダブルドリブルだろっ🤣」
トガピ兄さんが両手を上げ審判にアピールするも、どうやらさきほどまでの藍井ユウキの態度が悪かったこともあって相手チームに肩入れしているのか、スルーされてしまった。




キリットのOBS=両手ドリブルが発動して以降、俺たちは劣勢を極めた。ちなみにキリットは3クオーター終わりもきっちりブザービーターを決めた。その常識外のプレイにトガピ兄さんが「もうチートや😩チーターやろそんなん😠」となぜか関西弁で怒りをあらわにしたが、誰も彼をとめることができなかった。
しかも最悪なことに、エースのカレッジが5ファールで退場となってしまい、俺たちは4人で戦っていた。

4クオーターも残り30秒。スコアは78対99で負けていた。俺たちは最後のタイムアウトをとる。

「さすがにもう、勝負あったかな・・・」
俺はくやしさをおさえながら言う。チームを勝たせることができず本当に悔しい。もう敗戦のコメントもネタが尽きている。
「だとしても!」
藍井ユウキが急に声を荒げる。いや、負けているのは結構お前のせいもあるから。「だとしても!」じゃねーよ。

「一つだけ、まだ勝つ方法があるよ」

カレッジが静かにつぶやいた。

「ボクのOBSをつかえば一挙に22点入る。そうすれば1点差で勝つことができる」
「でもカレッジさんは退場してしまって・・」
その通り。最後の希望であったカレッジはオフェンスファールで5ファールとなり退場していた。あれは絶対にディフェンスファールだったのに。それもこれも藍井ユウキが審判をリスペクトしないせいだ。

「アースナ・・君がやるんだよ」
「え?私が? そんなの・・できないよ」
「アースナ・・やってみなければわからないことだってあるよ。受け取って、ボクのオリジナルOBS」

ラストオフェンス、俺たちはバックコートからの24秒を選択。アースナの一撃に賭ける。

静かにドリブルをつくアースナ。俺とトガピ兄さんの2枚でスクリーンに行く。
「行け!アースナ、叩き込んで来い!」
アースナのギアが上がる。

!?

あいつが・・キリットがハンズアップして待ち構えている!? くそっ、読まれていたか?

「悪いな・・・ここは通行止めだ」
「かまうな、行け!アースナ!」
「はあぁあああああああ」

フリースローラインからの跳躍、キリットの頭上を越えたアースナはそのままゴールへと向かい、ダンクを・・11連撃のダンクを叩き込んだ!!!

「よっしゃぁ、これで逆転!」
歓喜するチームメイトたち。

「まだだ🤩まだ終わってない!!!」

トガピ兄さんが叫ぶ。
残り8秒・・そうだ、あいつが・・・ビーターがまだいる!

エンドからのスローイン、キリットにボールが渡る。
しまった・・ブザービーター決定率100%のビーター・・・

ハーフコートラインから放たれるきれいな放物線。
負けるのか? ここまでがんばって結局負けてしまうのか?

誰もが下を向きかけたその時

「だとしても!」

藍井ユウキの声がコートに響く。見ると黄金のオーラに包まれたユウキが一心不乱に放たれたボールへと向かっていた。
はるか上空で弧を描くボールへとジャンプするユウキ。

「その力・・! 何を束ねた?!」
驚愕したキリットが問いかける。

「響き合うみんなの声援がくれたシンフォギアブーストでええええい!」

ボールがリングをくぐる寸前でユウキはボールをキャッチした。

「これってゴールテンディングじゃ・・グフッ」
アースナが腹パンをくらわす。
「トガピ兄さんが審判とコミュニケーションとって好印象だからこれは不問にしてくれるの」

なんとなくモヤモヤもあったけど、俺たちはラスボス戦に勝利し、この世界から開放された。




負けたら死亡というデスゲームを見事勝利し、とらわれのプレイヤーたちを解放した俺とトガピ兄さんは英雄として賞賛された。
全員解放となり俺たちも現実世界へと戻れることになったが、アースナはキリットともう少しイチャイチャしたいからBAOの中に残るとのことだった。

「アースナもいつの間にか大人になりやがって」

俺は少し苦笑いを浮かべたのちアースナとキリットを祝福し、トガピ兄さんとともに現実世界へと戻った。


数日後、おれは横浜ビートル・セイラーズの事務所へと足を運んだ。今回のデスゲームを経て思うことがあったからである。
俺は広報担当者を呼び出し、ある提案をした。

「チームのスローガンなんですけど、ちょっといい案が浮かびまして。BE COURAGEOUS(ビー・カレイジャス)なんてどうです? いまチームは苦境にたたされていますけど『どんな時でも勇気をもって勇敢でいこう』って感じで。いや、別に『結城』と『勇気』をかけてるってわけじゃなくて、はは」

「それって5年前くらいにもうやってるよ」




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