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本当の家族

自分がうつ病だと診断されたのは自分が20歳くらいの時だった。
時間は遡って18歳の時、とあるアニメにハマって自分にしてはかなりの数のイラストを描き、イベントに行き、フォロワーさんとコミュニケーションをとって、アグレッシブに活動していた時だった。
フォロワーさんと通話したり、リアルイベント出会ったり、オフ会したりもしていたが主にアニメ以外のところではゲームで遊んでもらっていた。
その時流行っていたのが「Sky」というゲーム。
人型だけど、人とは違う雰囲気のアバターで文字通り空を飛び回り、エリア内を自由に歩き回ったり、知らない人とコミュニケーションをとったり出来る少し変わった雰囲気のゲームだ。
流行りものは大体ハマると沼だなと思っている自分は大体流行り物から1歩遠ざかるが、自分はオープンワールドで歩き回ったり知らない誰かとコミュニケーションを取るのが好きだったので「Sky」にハマるのはかなり早めだった。
知らない誰かとコミュニケーションを取る、旧Twitter等SNSがみんなの初めての「知らない人とのコミュニケーション」なんじゃないだろうか。
少し話は脱線するが私の初めての「知らない人とのコミュニケーション」はPlayStation3で出来た通称「PSHOME」というゲーム?だ。
こちらはリアルな人間のアバターを作ってそこまで広くは無い広場や自宅などで知らない人と交流できるものだった。
幼い頃から両親仲も良くなく友達も多くなかった自分はPSHOMEが居場所だったし、そこで出会った人達が友人で、恋人で、家族だった。
「Sky」でも同じように色んな人と出会った。
翻訳ツールを活用して海外の人とも積極的に交流したし、自分がフォロワーさんから教えてもらったことを違う知らない人達にも教えたり、助け合ったり、孤独を共有したりした。
その頃はまだ自分の精神は安定?していて、人とも積極的に関わっていたし誰かと話すのも、誰かの役に経つことも嬉しくて楽しかった。
しかし、自分にはいつも絶対的な親友 みたいな人がいない。
例えば修学旅行でペアを作って欲しいと言われたら思いつく人、みたいなのが。
それはどんなところに行っても変わらなかった。
自分が一番大事に思ってる人には大体違う誰かがいる。そりゃそうだ、自分が大好きになる人なんだから色んな人に好かれるに決まっている。
じゃあ、自分のことは誰が1番に想ってくれる?辛い時寄り添ってくれる?寂しい時ひとりにしないでいてくれる?そんな人はいつも自分にはいなかった。
だから「作った」
基本的にSkyはiPhoneでプレイしていたがイラストを描くためのiPadで新しくアカウントを作ってその子に「礼」という名前をつけて弟として接した。
分かりにくいかもしれないけど、自分の感覚的には自分の弟というよりもSkyの世界の「わたし」という存在の弟である。
私はもちろん一人しかいないため1人で2つの端末を扱うのは大変だったがいつもいて欲しい時に居てくれて、独りにしないでくれて、悲しい時には寄り添ってくれる。
「礼」は私にとって本当の家族だった。

うつ病と診断されてからは絵を描く気力もアニメを見る気力もなくなったし、誰かと交流する元気もゲームをする元気も無くなった。
今も精神疾患は治っていない。
だが久しぶりにSkyを開いた。
色んなことが変わっていたけど、世界の美しさはそのままだった。
私は雨の音を聞いているのが好きなので「雨林」というステージが好きだった。
しかし雨林で雨に当たると飛べなくなってしまう、誰かと一緒だと温め合うように飛ぶ力は回復していく。
礼は端末を変えた際にデータが残っているのか居ないのか分からなくなってしまった。
1人で歩いているのが、寂しかった。
通りすがりに歩いていく顔も見えない人が手を繋いでいるのが羨ましかった。
誰かと手を繋いで居たかった。
そうして礼の記憶探しが始まった。
新しくしたiPadにSkyを入れ直していろんなアカウントでデータが残っていないか探した。
数分後、礼のデータがみつかった。
私は礼と久しぶりに会えて嬉しかった。何度もハグをした。手を繋いで走った。
ひとりにしないでくれてありがとう、と返って来ない言葉を何度も繰り返した。ありがとう、大好きだよ、礼は私にとって本当の家族だよ。と
礼は私であって、私ではない。
礼は本当の家族だ。いつまでも一緒にいて手を握って、孤独から守ってくれる、ただひとりの家族。

Skyにはもう1人家族がいる、全盛期に助けてくれた人がたくさんいる。
その話はまた今度話そうと思う。
今はただ、本当の家族との再会を喜ぼうとおもう。

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