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写真と民俗【大分県・奇祭ケベス祭】

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どうもメダカです初めましての方は初めまして。
今回は大分県の奇祭・ケベス祭に行ってきました。


奇祭・ケベツ祭

奇祭ケベス祭を知っていますか?
ケベス祭は、大分県国東市にある櫛来社(岩倉八幡社)で毎年10月14日に、開催される火祭りで、その起源や由来は不明です。
始まりは1100年前とも600年前とも言われていますが、始まりも由来もはっきりしない謎多き奇祭です。

オレンジの部分が国東半島

ケベスは鬼か神か?

とにかく謎だらけのケベスは何者かも謎とされています、一説には鬼で、一説には来訪神つまり外の世界(あの世)から来た神様。
来訪神であるエビスがエベスとなまり、方言化が進みケベスとなったと言う説もあります。

ケベス面600円
実物と同じお面も1万で売ってました

僕はまれびと説

僕個人はケベスは、【まれびと】なのではないかと思っています。
詳しくはまとめで書きますが、古代日本では多くの渡来人が国東半島に来ていたという話があり、
【まれびと】として来たケベスが信仰される文化が生まれたのではないかと思っています。
(ここら辺はちょっと専門的な分野なので、そんなモノだと思って聞いてください)
※ここはあくまで個人の見解で僕の妄想です。

※まれびと 異界から来訪する者の事。
民俗学者・折口信夫が提唱した概念で、祭祀などに異界から現実の世界を訪れる人間を超えた存在。

上野 誠 (著)
折口信夫「まれびと」の発見
おもてなしの日本文化はどこから来たのか?

主な祭りの登場人物

謎多き祭りなので、事前知識としてケベス祭の簡単な登場人物を説明します。

ケベス

まず祭りの主役となるケベスです、白装束を着て不気味なお面を付けた存在で、毎年氏子たちの中からクジ引きで選ばれます。
ケベスは神社で焚かれた聖なる火を蹴散らすために現れます。
蹴火子つまり火を蹴散らす者と書いてケベスという説があります。

トウバ

ケベスから火を守る役割の人々をトウバ(当場)と呼びます。
ケベストウバの面々からクジ引きで選ばれます。

トウバ(当場)

祭りの流れ

実際の祭りの流れを見て行きましょう。

ケベスが行われる櫛来社

開始前

トウバたちはまず近くの海に行き禊(みそぎ)をします。
九州とは言え、10月の海は十分に寒いです。
ケベス祭ではこの禊を【潮かき】と呼びます。

ふんどしも外して真っ裸なので
いろいろ写ってない一枚です

※禊(みそぎ) 罪・けがれをなくすために、川に行って水で体を洗い清めること。

禊が終ったトウバ達に祝詞があげられられます。

この頃にはあたりは真っ暗になっています
神社内部はこんな感じ

ケベス祭・本番

いよいよ祭り本番です。
太鼓が鳴らされた後、神社からお面を付けたケベスが現れます。

ケベスに選ばれた氏子は、神職からお面を付けられ背中に【勝】の字を指で背中に描かれます。
面を付け、背中に【勝】の字を書かれる事によってケベスが氏子に降りてきます。
神がかりってやつですね。

ケベスを降ろした氏子はまさに神がかり、独特な足取りで太鼓や笛を先頭に、神職と共に神社の前広場をぐるぐる練り歩きます。

ケベスは広場を何周かした後、集団から抜け唐突にシダを燃やした焚火を狙い始めます。

焚火に突っ込んでいくケベスを待ち構えるのは、トウバたちです。
聖なる火を蹴散らそうとするケベスに対し、火を守ろうとするトウバたち。
唐突にケベスとトウバたちの攻防が始まります。

攻防が進むと、なぜか神職がケベスを止めに入ります。
火を荒せなかったケベスの負けです。

輪に戻され最初は大人しく練り歩くケベスですが、また火に突っ込んでいく機会を狙っています。

あきらめずに突っ込んで行くケベスに、観客からは「ケベスがんばれー」声援まで上がります。

そんなこんなでケベスとトウバの攻防が繰り返される事9回
とうとうケベスはトウバの防衛線を抜け、火の中に突っ込んでいきます。

祭りが一変

ここから祭りの雰囲気が一変します。
僕は焚火から少し離れた場所で撮影していたのですが、ケベスが火に突っ込んだあと、なぜか観客席から悲鳴が上がり始めます。

観客席を見るとなぜかトウバたちが燃やしたシダの木を観客に向かって、振り回しているではありませんか!

老若男女構わず、火の粉をまき散らすトウバたち、悲鳴を上げながら逃げ惑う観客たち。

ケベスの聖なる火を荒されたトウバたちは、ケベスが乗りうつったかのように、炎を敷地内中にまき散らします。
僕もしっかり服に穴が開きました。

見に行く予定の人は燃えづらい素材の服を、着て行くことをお勧めします。

まさに地獄絵図

トウバたちが暴れている間、ケベスは何をしていたのでしょうか?
ケベスはこの持っている棒の先に括りつけた、わらづと(わらつつみ)を境内の三か所で、地面に三回づつ叩きつけます。

このわらづとを地面に叩きつける音が大きいほど、来年の豊作が約束されると言われています。

サスマタの先にぶら下がってるのがわらづとです

トウバが火をまき散らし、観客が逃げ回るなか太鼓が鳴らされ、唐突に祭りは終了します。

トウバたちの撒く火の粉を浴びると、無病息災のご利益があり、燃え残った灰を持って帰ると家内安全にもなると言われています。

参加される方はぜひ火の粉をを浴びて帰りましょう。
僕も沢山ご利益を授かりました。

集中的に狙われている祭り関係者のおじさん

これにてケベス祭は終了となります。

まとめ

いかがだったでしょうか?

これが謎多き大分の奇祭ケベス祭りです。

ケベス祭とはなんなのか?

ケベスが何者かは不明とされていますが、僕は過去の歴史から考えて【まれびと】なのではないかと考えています。

【まれびと】とは外の世界(異界)からやってくる、人の姿を借りた神であり、祭事の際にあらわれ、村に福をもたらす客神と呼ばれる存在です。

外の世界とは、海の向こう側(海外)や、村の外の世界を指し、そこからやってくる存在を村に招き入れ、おもてなしをすることで、新たな文化を村に取り入れるという、考え方です。

今でこそ内向きと言われる日本人って、実は新しい物好きでオープンな性格だったんですよね。

↓ここから全部僕の考えた妄想です

その上でケベス祭は渡来人と地元の人間の交流を再現した祭りなのではないかと僕は考えます。

前記の通り古代日本では多くの渡来人が国東半島に来ていたという話があり、渡来人との交流から【まれびと】としてケベスが生まれ信仰されるようになったのでないかと考えます。

ケベス祭りの準備期間に氏子たちは隣近所であっても物の貸し借りはおろか、客が来てもお茶も出さない、タバコの火も貸さないという、徹底した隔離を行います。
その後、祭りが始まりケベスとトウバの攻防が繰り返され、最終的にケベスは火の中に突っ込みます。

普通に考えれば火を荒すケベスは敵と捉えられますが、一度ケベスが火を蹴散らすと、トウバたちは急にケベスと同じように炎を境内で振り回し始めます。
炎は文化の象徴であり、ケベスは渡来人・トウバは原住民は最初こそ上手く調和しませんが、一度ケベスと炎が交わればケベスと炎(文化)が交じり合いトウバたちも新しい文化に調和していく様を再現した祭りなのではないでしょうか?

すべて僕の想像です

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