見出し画像

2022/10/12(水) ゆったりもっちり境界のなさ

この作品の基本になっている点対称のコンタクトワークは、「相手にどこか触られたら、もう一人の人に同じことを伝授していく」いわば身体での伝言ゲームのような形で成り立っていて、やってみようとするととても脳を使う。それどころかそれだけではとてもゆっくりだし、あまり見ていて綺麗なフォルムとも言い難い。でもそれを中屋敷南は選んでいる。

「振付」は言わばどう見えるか、どう見られたいかの自意識の塊で。例えば悲しくて泣くはずなのに、悲しいと見られたいから泣く、というような逆転が起きてしまうものだし、その第三者の目線をダンサーや役者は内在化させている。だけれども南さんのアプローチは、もう一度、悲しいという感情のところから丁寧にたどっている感じがある。
私たちは伝える速さを求めるあまり、感覚せずに動いてしまって不感症になりすぎたのかもしれない。この人はそこを丁寧に掘り返しているのかも。

この日は、2人ほど前回出演していないダンサーも入って実験していて、いろんなことが見えてきていた。身体が違うと体格差もあったり全然違うし、今までのことを言語化しないと伝わらないので発見があったりする。

改めて、見せに行かずに、外側の身体の形にこだわらずに何らかのタスクを真剣にこなしていきつつ、あくまで結果として身体のフォルムも美しく、ということはダンサーにとってかなり大変なことなのではと思った。
身体の内部で起きている面白さと、見え方の面白さは結構別物だと思うからこそ、これを彼女はどうまとめていくんだろうか。

そもそもこの人は、このワークを通じて何をして欲しいんだろう。触覚、視覚、六感を使って面白い現状を生み出したいんだろうか。動きの洗練のさせ方もいつも見ているような稽古とは全然違うようで、ゆったりもっちり、境界のなさを地味に要求する、時間の流れのゆったりとする稽古場だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?