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バックパッキング登山入門

 読みました。うん、自分でも思うけれど最近の私は山関係の本ばかりを読んでいる気がします。。。来月に出る山本文緒さんの新刊はすぐに買って読むだろうけれど。

 さて、こちらの本はまず表紙に惹かれて手に取りました。白を基調にしていてさっぱりしているし、タイトルの字体がちょっとかわいくていいなと。アウトドアに限らずゴツゴツ系というかゴリゴリ系というか、「男臭い」ものが苦手な私にとっては「おっ」というポイントでした。

 それで中を開いて読んでみると、これがなかなかしつこくなくて(誰目線だ)、素直な気持ちで読めたんです。「ふんふん、なるほど」「そういうことなんですね、四角さん」みたいに。

 さて、内容。

 内容も「根性出せば登れる!!」とかそういうことは書いてなくて、あくまで「楽しく登れるために必要な知識や考え方」が中心。ヨガやストレッチ、料理(行動食とか、ちょっとした栄養学的なこと)を登山という視点から見て解説、おすすめしてくれます。

 装備はもちろんルート作成についても書かれていまして。

 個人的に好きだったのはデジタル機器を積極的に使っていこうとしていらっしゃること。特にルート作成とマップ関係。

 私は紙の本が好きで、小説は紙で買っていますが、それ以外のほとんどは電子書籍に移行した人間です。図書館で借りてくる本はもちろん紙ですが。

 革製品の経年変化とかメリノウールの手触りとかが好きな一方で、デジタル機器もけっこう好きです、私。便利だし、美しいと思う。使いこなせばもっといろいろなことができると思う。次回の山歩きはデジタルで作成したルートを使おうと思っています(もちろん紙の地図も持っていきます)。

 私はソロキャンプを起点とするアウトドアの世界に足を踏み入れるまで、こういう「これをするのはこれのため」「これをするためにはこれを準備する」みたいなことと無縁で生きてきました。

 基本的に行き当たりばったり。なるようになる。根拠はないけど気合でやっていける。

 学生の頃は割とそれでだいたいのことがなんとかなったので(昔から身体は強くなかったからちょくちょく倒れていたけれど)、大人になってからも特に疑問に思うことなくそのまんまやってきたわけです。そしてたびたび心身に支障をきたして、倒れるように休んで、また無茶をする。

 でも、私から見たアウトドアの世界は何を置いてもまず「計画」と「準備」でした。

 これができないと「キャンプ当日」や「登山当日」を迎えることができない。アウトドアを始めてから私はそう思うようになりました。

 キャンプはけっこう雑に計画してもなんとかなるのですが(私が鈍いだけのような気もするけど…)、登山は「そもそも人が暮らすようにはできていないところを歩きに行く」という意識を持って準備をします。まぁ私は基本的に臆病なんで。。。

 でももしかしたら、その場の勢いである程度のことがやれるかもしれない。そういう人もいるかもしれない。生まれつき身体が丈夫な人だったら、いきなり真冬のキャンプもできるかもしれないし、初心者のうちからするっと富士山も登れてしまうかもしれない。

 でも、私はそうじゃない。私の心身はそんなことができるようにはつくられていない。

「根性出せばできる」のかもしれない。でも「根性」みたいなものを要求されるなんて、もうたくさんだ。「気合で乗り切れ、男だろ」なんて言葉も聞きたくない。

 私がやりたいのはそれじゃない。下調べをして、自身の心身の状態を考慮に入れた計画を立てて、それに基づいて準備をして、本番を迎える。

 そこで体験した「うまくいったこと」と「うまくいかなかったこと」をより分けていって「反省」し、次回以降に活かしていく。

 自分で自分をアップデートしていく。

 私はそういうことがやりたいんです。

 この本に出てくる登山術的なことに「根性」なんてありません。「死ぬ気になればできる」とか「気合で乗り切る」とかもない。

 あるのは「楽しい気持ちが続いていれば、身体は疲れていても前に進める」ということ。

 「だから楽しく登れるように、そのために私はこういうことをしています」というようなこと。

 好きな服を着るのも気持ちがあがるから。山歩きの最中に釣りを入れるのも釣りが大好きだから。四角さんは登山の専門家というわけではないそうなので、それも当然といえば当然なんですが。

 週末しか休みのないサラリーマンはこうやって登山のための休日を守ろう!みたいなものもあってちょっと笑いました。笑いながら「私も死守するぞ」と思いました。私の休日は私だけのものだ。

 そんな私にとってこの本はとても役に立ちました。それに何より面白かった。今は四角さんの「人生やらなくていいリスト」を読んでいます。

 書いてあること全てに共感することはないけれど(私と彼は別の人間なんだからそれは当たり前)、方向性というような大きな枠組みで考えたら同じ方角を向いているのかもしれません。

 自分の心の声を聴くこと。

 そしてそれを蔑ろにしないこと。

 蔑ろにしたことがある経験があるから知っているんです。したことがある人はみんな知っている。

 それが自分の命をどれほど虐待することなのかを。

 あー、山に行きたい!

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