コンテナビルド向けARMサーバクラウドの可能性


エッジコンピューティング/エッジノード用にARMサーバクラウドがほしいな、必要だよなと、ずっと前から思っている。
ARMサーバ大ブレイクの夢はもう何度も破れているわけなのだけど、ここ最近またブームが来ているような気がするので、簡単に現状をまとめてみた。

ARMサーバの過去の状況

ARMサーバは、これまで何度か盛り上がりがあったが、毎度しぼんでいる。最近では2015〜16年あたりにブームがあったがやはり盛り上がらなかった。

期待通りに盛り上がらない理由は、ARMプロセッサがその期待に見合うだけの性能を出せないことと、ライバルであるIntelプロセッサの低消費電力化がARMの想定より進むことで、それにより市場においてIntelサーバからの乗り換えが進まないことだと理解している。(なお、ここでいう性能とは、消費電力あたりの性能のこと。)
この記事に詳しい。2017年の記事で当時の状況がよくわかる。https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/column/virtual/1044188.html

ARMサーバ(サービス)の2019年現在の状況

2019年現在、ARMサーバが再び盛り上がっているように感じる。

一番目立つ動きは、Amazon EC2でA1インスタンスというARMプロセッサの仮想マシンサービスを開始していること。ARMベースの仮想マシンのサービスは現時点でAWSが唯一ではないだろうか(菊地が観測できる範囲で)。

ARM自身の動きも活発化している。先(2015,6年頃)の盛り上がり(と失速)の頃に開発開始したプロセッサがそろそろ完成して出てくる頃ということなのだろう。

なお、一番上の記事によると、EC2のARMサーバはAmazon自社開発らしい。おそらくこれは重要なポイントだ(後述)。

今ここでARMサーバが再び盛り上がる理由として、これまでのARMサーバブームにおける「低消費電量で高性能な計算資源(特に対Intel CPU)」という想定だけでなく、菊地としては「エッジコンピューティングのバックエンド」という用途があるのではないかと考えている。

現在、Raspberry Piでk8sクラスターを組むのが流行っていたり、エッジコンピューティング向け(にも使える)ソリューションとしてk3sKubeEdgeなどが相次いで登場するなど、エッジコンピューティングがブレイクする兆しがある。そして(菊地は前々から言っているが)エッジノードの最右翼はARMプロセッサ搭載のRaspberry Piだ。Raspberry Piでコンテナ環境を作っていると、もっとパワーのあるコンテナビルド環境が欲しくなる。これが、ARMサーバを盛り上げる、これまでになかったブレイクスルーになるのでないか。

ARMサーバ(サービス)の技術要素

プロセッサ、サーバが出たとしても、その上で動くOSや各種ソフトウェアがなければ話にならない。

Linux系OSにおけるARMサーバへの対応状況
Ubuntu : https://www.ubuntu.com/download/server/arm
CentOS : http://isoredirect.centos.org/altarch/7/isos/aarch64/
その他、RedHatも対応している。上述のAmazon EC2 A1インスタンスではAmazon Linuxが使える。調べきれていないが、現在は他にも対応しているものは多そう。

ハイパーバイザ
KVM : https://www.linux-kvm.org/page/Processor_support
Xen : https://wiki.xenproject.org/wiki/Xen_ARM_with_Virtualization_Extensions
おそらくキモになるのはここ(ハイパーバイザ)ではないか。現状(まだ)ARMの仮想化は、Intelほどにはこなれていないのではないか。そして、Amazonがサーバを自社で開発した(OSも)というのは、このあたりに理由があるのではなかろうか(情報なく、あくまで推測だが)。

各社ビジネス状況

上述のAmazon EC2の他、ARMサーバによるサービスに関する情報。

packetというクラウド事業者が、ARMサーバのベアメタル貸出しサービスを実施中。96コアのサーバが1時間0.5ドルという結構衝撃のある値付け。

c2.large.armという次のインスタンスのサービスも準備中のようだ。この新しいインスタンスはAmpereという新しいプロセッサを使うらしい。
余談だが、このpacketのサービスはベアメタルに特化しているのだけど、そしてそれはおそらく意図的に狙ってそうしているのだろうけれども(仮想化環境では動かしづらい、OpenStackやVMWareなどの仮想化ソフトウエア自体を使いたい人にフォーカス)、一方で、ARMプロセッサは仮想化すると性能出ないからベアメタルにせざるを得なかったのでは?と邪推したくなる。

その他として、さくらインターネットのグループ企業プラナスソリューションズでARMプロセッサのホスティングサービスをビジネス中。

プラナスのサービスで使っているサーバはHPのHPE Apollo 70 Systemというごっついもので、これはプラナスがHPC領域にフォーカスしているのでそういう選択なのだろう。

おわりに

コンテナビルド向けのARMサーバクラウドの可能性、というタイトルにしたにもかかわらずARMサーバの状況についてまとめたところで終わってしまった。今後、本題であるところの、コンテナビルド向けではどうか、について突っ込んで調査・評価していきたい。


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