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PJW22 弟の復讐

結婚した山幸彦(やまさちひこ)(以下、ヤマピー)と豊玉姫(とよたまひめ)(以下、トト)は幸せな生活を送っていた。

住まいは、海の神、大綿津見神(おおわたつみのかみ)(以下、海)の御殿である。

そして、3年ほどの月日が流れた。

あるとき「ヤマピー」は、兄:海幸彦(うみさちひこ)(以下、ウーミン)の釣り針を探すため、ここまで来たことを思い出した。

ヤマピー「幸せ過ぎて、完全に忘れてたんやじ。やっぱり戻るべきかな? いや、しかし・・・。戻るべきか、留まるべきか、それが問題やじ。」

海「どうしたのじゃ? ヤマピーよ。」

ヤマピー「こ・・・これは、お義父さん。実は、僕がここに来た理由は・・・。」

海「な・・・なにっ!? 兄の釣り針を失くしたのかっ!?」

ヤマピー「お義父さん。まだ、何も・・・。」

海「ただちに魚たちを集めよっ! 釣り針を探すのじゃ!」

こうして海中大捜査網が展開され、釣り針は、一匹の鯛の喉から見つかったのであった。

陸に戻る際に「海」は、義理の息子に言った。

海「秘伝の呪文を教えようぞ。これを唱えれば、ウーミンの田が不作続きとなる。これで優位に立てようぞ。」

ヤマピー「お義父さん。ありがとうございます。」

海「それから、ウーミンに反撃された時は、これを使うが良い。」

ヤマピー「お義父さん。これは?」

海「潮の満ち引きを操ることができる宝具じゃ。その名も『塩盈珠(しおみつたま)』と『塩乾珠(しおふるたま)』という。」

ヤマピー「お義父さん。何から何まで、本当にありがとうございます。」

妻の「トト」もやって来た。

トト「あなた・・・ファイト!」

ヤマピー「なにゆえ、異国(とつくに)の言葉なんや!?」

とにもかくにも、陸に戻った「ヤマピー」は、「ウーミン」と再会し、釣り針を返す際に呪文を唱えた。

それからというもの、「ウーミン」の田は不作続きとなってしまった。

「ウーミン」は、貧しさから自暴自棄な生活を送り始める。

そしてついには「ヤマピー」のもとに攻め込んできたのであった。

弟の仕業だと気付いたのである。

攻撃を受けた「ヤマピー」は宝具を使った。

塩盈珠(しおみつたま)で「ウーミン」を溺れさせ、許しを乞うと塩乾珠(しおふるたま)で助け、また攻めてくると溺れさせ・・・。

これを何度か繰り返した。

学習能力の低い「ウーミン」も、さすがに適わないと判断し、弟に服従を誓ったのであった。

ウーミン「もう許して欲しいっちゃ。服従するっちゃ。」

ヤマピー「いいでしょう。じゃっどん、なして(なぜ)、我ら兄弟は戦ってるんでしょうか?」

ウーミン「地方政権との争いが終結したことを示唆する神話・・・と考えられているようやな。」

ヤマピー「そうやったんですか?」

ウーミン「じゃが(そうだ)。ちなみに、わしは九州南部の隼人(はやと)と呼ばれる人々の祖となるんやじ。」

ヤマピー「頑張ってください! 兄上!」

こうして「ヤマピー」が勝利者となったのであった。


つづく



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