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PJW21 海中旅行

瓊瓊杵尊(ににぎ・のみこと)と木花開耶姫(このはなのさくやひめ)の息子たちは、スクスクと成長していった。

そのうち、第一子の火照命(ほでり・のみこと)は、海で魚を釣って暮らしたので「海幸彦(うみさちひこ)」と呼ばれるようになった。

今後は「ウーミン」と呼びたい。

また、第三子の火遠理命(ほおり・のみこと)は、山で獣を獲って暮らしたので「山幸彦(やまさちひこ)」と呼ばれるようになった。

今後は「ヤマピー」と呼びたい。

ある日、「ヤマピー」は兄の「ウーミン」に頼みこんだ。

ヤマピー「僕も兄上の道具を使って、釣りがしたいっちゃ。」

ウーミン「それは嫌やぁ!」

ヤマピー「そこをなんとか・・・。やってみたいんやじ!」

ウーミン「仕方なかね。じゃあ、お互いの仕事道具を交換するっていうのはどうね?」

ヤマピー「いっちゃが、いっちゃが(いいよ、いいよ)!」

早速、兄の仕事道具を借りて、釣りに出かけた「ヤマピー」。

ところが、魚が全く釣れないどころか、兄から借りた釣り針を失くしてしまった。

弁償しようと「ヤマピー」は自分の剣を折って、釣り針を作った。

ヤマピー「兄上、申し訳ないっちゃ。釣り針を失くしたしまったっちゃ。」

ウーミン「な・・・なにぃぃ!!」

ヤマピー「でも心配しないでほしいっちゃ。新しく釣り針を作ったじ。」

ウーミン「こんなもの、受け取れるかぁ! あの釣り針を返せ! あの釣り針じゃないとダメなんや!」

ヤマピー「ええぇぇ。そ・・・そんな・・・。」

「ヤマピー」は困り果て、海岸で一人、泣くことしかできなかった。

すると、潮流の神様である、塩土老翁(しおつちのおじ)(以下、ジイ)が現れた。

ヤマピー「汝(いまし:あなたの意)は誰や?」

ジイ「わしはジイですぞ。ジャパンウォーズの第一話にも登場するんですぞ。」

ヤマピー「よく分からんが、僕の悩みを聞いてほしいっちゃ。」

ジイ「なんでしょう?」

ヤマピー「兄上の釣り針を失くしてしまったんやじ。代わりの釣り針を作っても、受け取ってくれないんやじ。」

ジイ「では、海の神、大綿津見神(おおわたつみのかみ)(以下、海)のもとに行きなされ。」

ヤマピー「おおわたつみ? じゃっどん、どうやって行けばええんや?」

ジイ「わしが竹籠(たけかご)の舟を作りましょうぞ。それで、海神のもとに行きなされ。」

こうして「ヤマピー」は竹籠の舟に乗って、海神の御殿に向かった。

「ヤマピー」が御殿の前にいると、「海」の娘、豊玉姫(とよたまひめ)(以下、トト)の侍女が、水を汲みにやって来た。

これを見て「ヤマピー」は、あることを思いついた。

首飾りの勾玉(まがたま)を口に含むと、侍女の持っている水入りの桶の中に、吹き入れたのである。

この勾玉に呪力を宿すことで、桶の中から取り出せないようにしたのである。

侍女「やあねぇ。取り出せないなんて、完全に呪力、宿ってるわ。」

トト「どうしたの?」

侍女「あっ!『トト』様。呪力入りの勾玉を放り込む、不届き者に遭遇しちゃいまして・・・。」

トト「不届き者? めっちゃ気になるぅ!」

門の外に出た「トト」。

その眼前には、貴公子が一人。

言うまでもないが「ヤマピー」である。

目が合った瞬間、恋に落ちる二柱(ふたはしら)。

ヤマピー「欲しい物には唾(つば)をつけるってことで、やってみたんやじ。」

トト「つ・・・つけられちゃった・・・。」

父親の「海」も「ヤマピー」を気に入り、二柱は結婚したのであった。


つづく




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