戦後高度経済成長の正体について (論文)

2023年10月30日(月) 菊池嘉雄89歳

   高度経済成長とはモノとカネが活性化することで、それを好景気ともいう。好景気の正体はエルギーで、エネルギーの正体は人である。人が大勢いて大勢が働けばエネルギーは増大し、経済が活性化し、好景気となる。
 戦後、戦地や外地から引き上げた人たちで日本の人口は急増した。その人たちが産んだ子どもたちは企業の戦力となり金の卵と称された。その人口は時の経済企画庁長官であった堺屋太一によって、団塊の世代と呼ばれる程の大勢の人たちだった。その大勢の人たちの働きが労働エネルギーとなり、労働エネルギーが経済エネルギーとなり、そのエネルギーが戦後復興をもたらした。
 エネルギーは必ず拡散し元に戻ることはない。これを物理学ではエントロピーの法則というが、この法則は日本社会の経済状況にも当てはまるのではないか。
 戦後の急速な経済発展は急速に下落した。その様をバブル (泡) にたとえてバブル景気といった。それはまさにエントロピーの法則が示すものだった。
 古来、社会の繁栄と人口の数とは比例関係にある。そもそも生物は個体数の数が生存に関わる。弱小な蟻は個体数の多さで生き延びる。ライオンは最強の動物だが、一頭よりは数頭のほうが狩りの成功率があがり一族の繁栄につながるので、やはり個体数が多い方がいい。だが、蟻でもライオンでも微少な細菌でも、数が増えていけば生存できなくなり減少するか滅びるかしてしまう。そこには数を一定に保つ大自然の自動制御が働いている。この辺を宗教家は神の計らいなどというのだろうが、エネルギー論で考えるほうが説明がつく。更に面白い事例をひとつ加えよう。戦後日本の人口急増にはそれに見合う食料が必要だが日本に食料はなかった。が、アメリカではだぶついていた。それを日本に持ち込んだ。エネルギー論に立てば人口エネルギーをもたらすためのエネルギー源である食料が補給され、これによって日本もアメリカも経済が活性化したのである。
 今、急速に経済が冷えているが、その要因に人口減少があり、国外生産がある。労働力を持つ若年層と壮年層の人口が減ったのに加えて、企業が安い労働力を求めて国外に生産拠点を移したからである。つまりエルギー源を失ったので、バブルが発生せず、経済エネルギーが燃え上がらないのである。再び燃え上がらせる方途があるとすればエネルギー源を取り戻すことでしかないのではないか。
 世界に目を転ずれば若者が最も多い国はアフリカである。ということはエルギー源を最も多く持っている民族ということになる。やがて燃え上がるだろう。燎原の火のように、あるいは津波のようにアフリカンバブルが世界を覆うだろう。その時、社会機能不全に陥っている日本は、アフリカンバブルに救われるのか飲み込まれるのか・・・?。
 以上、経済成長という社会現象を、経済学の視点からではなく、社会学の視点からでもなく、ましてや文学的な情緒的考察でもなく、物理学的エネルギー論に立って、戦後の高度成長の正体について考察し推論してみた。なお、本稿は学術論文ではないので根拠となる文献やデータは記載しない。 

  友人NKさんの読後感想文 (抜粋)

 菊池嘉雄様
こんにちは。面白い論文を読ませていただきました。エントロピー、懐かしくこの用語に接しました。
 エントロピーについては、一般物理学のゼミで、「熱力学第一~第三の法則を使って、永久機関は存在しないことを説明せよ」のテーマがありました。当時、あちこちの本を読みあさり、理解し難い数式を羅列してピンチを乗り越えたことを思いだします。今ではすっかり忘却の彼方のものになりました。
 今回の先輩の論文を読んで私なりの感想です。
 論文は、労働エネルギーと経済エネルギーは一体であり、これを支えるのは人間であるから人口減は、経済の成長に大変なダメージを与える。よってエネルギー源を最も持っているのはアフリカに将来頼ることになるかも?とのこと。私はエネルギーの総力は人の数ではなく、日本を応援する国々の中、就学率の高い?・識字率の高い?でないと上手く機能しないと考えます。
 戦後の日本は全ての分野で人が足らなかった。今は、全ての職業の最先端は一握りのエキスパートがリーダーとなって組織を牽引している。よって人の数以上に、高度化した分野・自分の持ち場の仕事を理解出来る人が多くないと組織は動かないからです。いずれにしても日本の若者の右肩下がりの人口動態では30~50年後の我が国はどうなっているものか、技術国日本の標語は掘っても々出てこない土の中にあって、日本昔話の世界になっているかも。有り難うございました。
        
NKさんへの返礼文 (抜粋)
 
   NK様
 早速読んで、面白がってくれて、有り難うございます。そして骨のある解釈と答え、さすがだなと思いました。
 「アフリカに将来頼ることになるかも?とのこと」、いいえ、頼るのではなく「飲み込まれる」ことを懸念しているのです。アフリカは今は後進国ですが、猛烈なスピートで文明国に向かっているいるようです。日本が明治から100年かけて文明国へ進んだよりもっと速く進んでいるようです。今はまだ部族間や民族間の争いが続いているけれども、日本の徳川が全国統一したように、アフリカもやがて統一されるでしょう。そうすると世界一強大な国になります。かって30万年前に人類がアフリカに誕生し、世界に散らばって、世界の民族が出来たように、今度は新アフリカ文明が全世界に波及するのではないかと思われます。
 アフリカの次に人口が多いのがインドで、その次が中国です。どちらも後進国でしたが、中国の就学率や識字率は高く、「眠れる獅子」が目を覚ましつつあります。どちらも人口と土地が大きい国で、人々は食料と文明に飢餓感を持っています。それを満たすため、やがて世界を席巻するでしょう。ただし中国のかっての「一人っ子政策」がたたり、やがて急激な人口減少が来るから、中国の国力はいまいちとなるでしょう。
 「戦後の日本は全ての分野で人が足らなかった」、私もそう思っていました。が、そうではなかったことに気がつきました。戦後は人口が膨れあがり足りなくはなく、人数に見合う働き口がないため失業者が溢れていました。「人が足らなかった」は「人材がいなかった」という意味ならば、「それなら戦後復興は出来なかった」という反論が成り立ちます。外国から人材を入れた明治とは異なり、戦地から帰還した人材や、中卒や高卒が現場習得の知識や技術でがんばったから戦後復興したのだと、教え子たちのその後を見て気がついたのです。
 今、私が入居している老人ホームでは人手不足解消のためフィリピン人と中国人を雇っています。今の日本はそのような小手先でしのいでいますが、その程度では国力があるとかエネルギーがあるとは言えないでしょう。
 最後に交響楽に例えてこの稿を終わりにします。
 交響楽を聴くと壮大な音響エルギーに包まれますが、このエネルギーは指揮者が出しているのではなく、それぞれの楽器が出しているのです。ということは楽器を奏でている楽団員が出しているわけです。楽団員が出すエネルギーは楽団員が食べた食べ物が元々のエネルギー源です。図式化すると、食料が持つエルギー ⇒ 楽団員の運動エルギー ⇒ 楽器の発音エネルギー ⇒ 交響的な音響エネルギー ⇒ 空気の振動 ⇒ 耳の鼓膜の振動 ⇒ 聴覚神経を伝わる電気信号 ⇒ 脳内聴覚野 ⇒ 大脳の識別野 ⇒ 交響楽と認識。このようにエネルギー変換が行われて壮大な交響楽が成立します。指揮者は学歴と知識と経験を持つ集団のトップですが、楽団員がいなければ指揮者がいても交響楽は実現しません。これと同じように、会社では社長がトップですが、実際のエネルギー発現は個々の社員や下請けの労働者たちです。社員数や下請け労働者の数が多いほど会社の仕事は大きくなります。軍隊による戦争もこれと相似形で兵隊の人数が多くなるほど大規模な戦争となり破壊エネルギーも大きくなます。ただしこれは今までのことでこれからの戦争は機械力が主力となるので必ずしも人数と相関するわけでもありません。
 
 国のありかたもやはり相似形となり国の人数と国力は比例します。
 
 蛇足になりますが、古来の言葉に、人数が集団の発展を示すものがあることを挙げておきましょう。
○「カナンの地へゆけ。そこは密とミルクがある神が約束する地だ。そこで子孫を増やせ」旧約聖書。人数が多ければ繁栄すると言っているわけです。
○「子は宝」日本の諺。「産めよ増やせよ」戦時の国力増進スローガン。
○「人は石垣人は城」山梨県の民謡風歌謡曲「武田節」の歌詞。
 

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