![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/55944639/rectangle_large_type_2_0e2c289d285a75f256aab964e5194ebd.png?width=800)
ぼっちと就活
巷では「ぼっちだと就活詰む」とか「そもそもコミュ力ないとインターン無理」とか友達のいない大学生を脅かすような声で溢れている。
大学時代友達0人で過ごした私であるが、就活の戦績は25社選考を受け、内定は4社。
当時売り手市場といわれてたにしても、コミュ障という重いハンディを背負っていたにしてはなかなか奮闘したのではないのだろうか。
そんな私がいかにして、コミュ力必須イベント「就活」を乗り切ったのか語ってみたいと思う。
発言数0で終わったグループワーク
大学3年生の夏休みだった。
私は「1日インターン」なるものに行った。
特に理由なんてものはなくて、周りの大学生がやっているからという理由でほとんど「大学3年の長期休暇にはインターンに行く」という通過儀礼をこなすのに等しかった。
私は特に何も考えずに近くのコムサで買ったスーツに身を包み、大阪のやたら高いビルのインターン会場に行った。
学生6人が向かい合って座るタイプのテーブルに着くと、私以外の男子学生全員が前髪を上げていた。
そう、見れば分かる。ぼっちが苦手なタイプだ。絶対空きコマを大人数で学食の席占拠して「サークルの◯◯は△△先輩とヤッたらしいよ」みたいな話を大声で延々とするタイプだ。そのくせちゃんと容量は良く単位は取れて、今まで茶髪のツイストパーマだったくせに、就活前に意気揚々と黒染めして名だたる企業の説明会にさも常識人面で溶け込む奴らだ。
ぼっちでも乗り切れるように割と大人し目の企業を選んだつもりだったが、そうかここまで君らの軍は攻め込んできたんだな。
私は重い前髪で現実までもシャットアウトしたくなった。
「あ、ここにいてはいけない」
最初に抱いた予感。まもなくそれは実感となる。
「あのさ…◯◯(たいてい横文字)って企業受けたんだけどさ、あそこフェルミ推定が…」
「それってさ定量的に評価できるの?定性評価だとさぁブレんじゃん?」
「まずさ、"前提"を決めようよ。あっその前にタイムキーパーだな」
おい、何だこれ。就活ってビジネス用語言うたびに得点が入るゲームなのかこれは。
そうとも知らず無知で参加した私は、ウイイレでふざけて行われるマンチェスターユナイテッドVS北朝鮮代表の試合みたいに、なすすべなくボコボコに点数を入れられるのみだった。
何か言わなきゃいけないのは分かってる。でも喋れない。
この苦しさが分かるだろうか。普段会話しない方が心地が良いはずなのに、この日ばかりは口を開けない自分がひたすらに恥ずかしくなって「私には就活は無理だ」という思いでいっぱいになったのを覚えている。
グループワークの8時間、発言数は永遠の0だった。
文系学生が大学院行くと言い出すのは「にげる」のコマンド
人間は何かで満たされないと他のことで自己肯定感を求めたくなる生き物だ。
「俺は本来は探求者タイプだしなー」
インターンで何も言えなかった私の心はもう折れていた。就活から逃げるように大学院受験を志すようになった。
きっと大学院に行けば専門的能力(?)が身につき、就活も無双できるようになるはず。とりあえず凄そうな大学院に進学すればあとは楽勝だろうと学歴ロンダを目論見始めた私は、紛れもなく目の前の戦闘から逃げようとしていだだけだった。
私は長期休暇に入れていたインターンを全てキャンセルし、東北大学、名古屋大学といった名だたる大学の教授に会いに行くことに専念した。
インターンに現れる就活生とは違い、大学院の教授は優しかった。
当時大学で学んだ薄い知識しかなかった私を快く受け入れてくれて、研究室のイベントに招待してくれたり(もちろん参加はしてない)、「受験を待ってるよ」などの優しい言葉をくれたりした。
しかし、大学院に一縷の望みを見出したのはひとときのオアシスに過ぎず、いざ院試の問題を読んでみるとその壁の高さに絶望した。
「そうか。ここも難しい道のりなんだな」
大学院というオアシスは蜃気楼として消えて再び就活という砂漠に解き放たれた瞬間である。
社会不適合者になることを恐れてベンチャー社長に弟子入りした話
実際の就活はというと、第一志望には落ちたものの何とか大手 SIerに2社、通販会社、高校事務と合計4社の内定を取れた。
しかし内定も決まって、あとは遊んで過ごせる余裕な大学4年生であるはずの私はまだ見ぬ社会に震えていた。
そう、発言数0で終わったグループワークがトラウマだったのである。
きっと私は社会に出て、誰ともコミュニケーションが取れず挙げ句の果てに無能扱いされるのだろうと、湧き出る被害妄想に苦しんでいた。
そんな時この記事に出会ったのである。
大学生の間で一度は悩むであろう、大手行くかベンチャー行くか論争が主題のブログであるが、たいていは「迷ったら大手行くべし」「大手からベンチャーへは転職できるけど逆はできない」みたいな「二択なら大手」なものばかりの検索結果の中で有一「ベンチャーに行くべきだ」という結論を述べていた。
ただただ未来に悶々としていた私は
「この人みたいにベンチャーでインターンすれば成長できるんだ」
と悩みを打破するための一本の藁にすがる思いだった。
「就活終わってからインターンしてるの?何だその順序?」
久々に会った高校の友達にはそう言われた。
親も2000人規模ゴリゴリ安定志向SIerの内定に承諾して無難に就活終えた私がインターンに行き出すのを訝しげに見ていた。
「まずは鞄持ちから」と採用してくれたその企業は社員数2名。イベント・PR関係のスタートアップベンチャーだった。
そこで任されたのは、営業というコミュ障ぼっちの対義語にあたるような職種。
会話できない・気づかいできない・スキルもないの三重苦だった私を迎え入れてくれた社長は、かなり懐が深い方だったと思う。
そこからはビジネス以前に今まで触れてこなかった社会常識を学ぶ毎日だった。
「エレベーターのボタンはお客様より先に行って押してあげるものなんだよ」
「会社説明で渡す資料は取り出しやすいところにしまっておかないと」
「60分の商談が40分で終わったから失敗?むしろ40分も話せたんだしまだ諦めるのは早いんじゃないの?」
本来忙しいはずなのに社長は当時何もできなかった私を一から育ててくれた。
しかし20年かけて培ってきたコミュニケーションの欠陥を治せるはずもなく「麻婆豆腐がうまい店がある」といって食事に連れていってもらったにも関わらずラーメン食べ始めるような相変わらずぶりであったが、最後までビジネスの向き合い方を教えてくれた社長のおかげで社会への苦手意識みたいなものはなくなった。
先ほど紹介したブログみたいに、ベンチャーでインターンしたからといって一流のビジネスマンになれたわけじゃないけども、一応1人の営業マンとして半年を過ごせたことで、こんな自分でもまともに社会人なれるかもといった淡い自信がついたのかもしれない。
成功体験?ではないかもだけど、ぼっちだって大きく就活に失敗することはないし行動次第で生きていけるということが伝わってくれたなら嬉しい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?