マガジンのカバー画像

【映画評】こんなん観ましたけど

6
運営しているクリエイター

#映画

欠如を反転させたとき、人は輝く。ナイーブな野生児、「七人の侍」菊千代のアンビバレンツ。

欠如を反転させたとき、人は輝く。ナイーブな野生児、「七人の侍」菊千代のアンビバレンツ。

これってオレそのまんまじゃねえの。

 野武士の襲撃から村を守ろうとする侍たちと百姓を描いた映画「七人の侍」(1954)。
侍や百姓たちを演じる役者の中でひとり、舞台経験のない、芝居の素人がいます。しかも、主役。
 当時って、映画俳優は皆、芝居小屋の役者経験があった。好きで役者になった猛者ばかり。
 そんな中で、はなから映画俳優として役者人生を始めたひとり。

 それが、「菊千代」こと、

もっとみる
三島由紀夫のコンプレックスを刺激した映画。死に場所を探す負け組の男たちの最後に見た夢。

三島由紀夫のコンプレックスを刺激した映画。死に場所を探す負け組の男たちの最後に見た夢。

「七人の侍」(昭和29年)黒澤明監督作品

 黒澤明監督の映画を見渡すと、とにかく「男たち」の魅力が満載。女性がメインの映画はほんの一部。対照的に、女を描いたら一番といえば、溝口健二監督でしょう。

 では黒澤はなぜ「男たち」が得意なのか?

 武士社会と「御家」はきってもきれないもの。御家に奉仕できてやっと侍の矜持がたちます。

 これは現代産業社会でも同じ。組織のパーツとしての生産性が問われる

もっとみる
映画「パピヨン」 (1973) 人生を無為に過ごした罪・・・。自由を求めて生きる。そのとき、すでに自由は手中にある。

映画「パピヨン」 (1973) 人生を無為に過ごした罪・・・。自由を求めて生きる。そのとき、すでに自由は手中にある。

 スティーブ・マックィーンとダスティン・ホフマンの主演映画「パピヨン」(1973年)。監督は「猿の惑星」のフランクリン・J・シャフナー。

 あまたある脱獄映画の一つですが、脱獄方法の奇抜さやスリルだけの映画ではありません。

 映画の後半、パピヨン(マックィーン)は夢を見ます。
 無実を訴えるパピヨンは「人生を無為に過ごした罪により、有罪…」といわれ、妙に納得する。
 なんのこっちゃ、と思えるこ

もっとみる