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【書評】こんなんいかが?

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忘れた頃になんども読み返す愛すべき紙の束。カバーについた手指の脂、紙の匂いと手触り。それはともに過ごした時間の記憶。本はもはや生きもの。
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2023年4月の記事一覧

チョー地味な南インド料理本がただモノではなかった件。料理本はhow-to本。写真集ではないのだ。

チョー地味な南インド料理本がただモノではなかった件。料理本はhow-to本。写真集ではないのだ。

 インド料理といえば、ナンとタンドリーチキンだが、この料理の元は、インド北西部の一地方の料理。
 だからこれは、日本料理といえば、寿司とてんぷら、といっているようなもので、ネイティブの日常食ではないのだ。
 「南インド料理」の本髄を実践派として日本に紹介し、インド料理に対するこうした偏った常識を覆した立役者の一人が、カレー伝道師・料理人の渡辺玲さんだ。
 著書の「カレーな薬膳」(晶文社 2003年

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「うまくいっている」時、恐るべき退屈の大穴が待ち受けている。沢木耕太郎編「心に残る物語ー日本文学秀作選 右か左か」

「うまくいっている」時、恐るべき退屈の大穴が待ち受けている。沢木耕太郎編「心に残る物語ー日本文学秀作選 右か左か」

 物語を書くっていうのは、とつとつと湧き出すように出てくる言葉を、湧き出すまま書きつけているのだと思っていました。

 そのうち、小説といってもそれは書き手が意図する入念なる計画の下に数々のパーツを組み合わせて作りだした「言葉の建物」だと知って、書くのはたいへんなことだとさらに思いながらも、人間の作る「作りもの」であるには違いないと、何か落ち着いた気持ちにもなったのでした。

 物を作るというのは

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