英語詞を中心に乃木坂46「Actually...」分析

この1週間は乃木坂ファンにとっては激動の1週間でした。
新センターの中西アルノさんが爆誕しましたね。
もちろん一人のファンとして言いたいことはありますが、とりあえず話題に振り回されずに私ならではの新曲「Actually…」を分析しようと思います。
運営としてはセンセーショナルなお披露目だったので勝利なのでしょう。

英語詞

冒頭と2サビの後に英語の詞があるというのがこの曲の大きな特徴です。メンバーの清宮レイさんが読んでいるということでしたが、彼女と同じく海外経験のある私なりに深読みしていこうと思います。
(国語の授業みたいですが)英語詞にのみカギ括弧がついているということは他の歌詞とは絶対に違う意味があると考えました。
なお普通の括弧に入った日本語詞は他人(近くで踊る先輩)からの言葉、と考えるのが自然かもしれませんがギリシャ悲劇のコロスからミュージカルに至るまで使い古された仕掛けなのでここでは触れません。
この曲自体中西さん演じるアイドルと思われる主人公の心情の吐露という形式を取っており、パフォーマンス(というフィクション)を通して「本音」を淡々と語る感じです。ゆえにカギ括弧内はパフォーマンスではない本音そのものなのでは?
2回しか出てこない英語詞が非常に重要なのは間違いないでしょう。

「You know I need to find something, real bad…」

冒頭のこのセリフに楽曲のエッセンスが凝縮されていると言っても過言ではありません。
まず和訳第一ステップ。
「あなた知ってるよね、私は何かを見つけなければならない、すごく」
確かに"You know"という字面を追えば「あなたは知っている」になりますが、英語として正しいことと表現としての正しさは異なります。
というのも、"You know"は意味とは別に「ええ…」「えっと」のように場つなぎ表現的な使い方があります。ここでは流石に(バリバリ日本人の)秋元さんですし、場つなぎだとは思いませんが、ここでわざわざ英語を使ったということは"I"と"You"を日本語に落とし込み、強く意識する必要はない、と解釈しました。なぜならば次の「I'm telling you…」を除けば秋元先生定番の「僕」「君」などは登場せず、中西さん演じる主人公の心の言葉を淡々と述べているからです。細かい話になりますが"You know"が"You know"でも"You know"のどちらでもなく、平坦に"You know"と発音しているのもポイント。どちらかを強調(特に後者)すると「あなた、分かるよね。」と明確に他者に理解を求めることになり、主人公像が変わってしまいます。ここは清宮さんや楽曲制作チームの力量を信じたいです。

そして"real bad"はスラング。英語教師はもちろんのこと、目上の人には使ってはいけません。本気で探してるんだ、という若者の不器用ながら純粋な思いが見て取れます。雰囲気は日本語の「マジ」が近いでしょう。

ではここを無理矢理日本語訳するとどうなるのでしょうか。
受験英語的にはアウトですが、伝えるべきことだけに絞って意訳すると「何か見つけないといけないんだ、マジで…」になりました。
何なのかはこれから模索していくのでしょうね。大人なら「自分」とか「アイデンティティ」などと答えを用意しがちですが、成長していく本人特有のなんともいえない心情を秋元さんはこの一行目で切り取ったのでしょう。
そしてサビの"Actually…"(実のところは分からない)と響き合うことになります。

「I'm telling you the truth, no lies」

続いて楽曲後半を彩る第二の英語詞。
ここでは"you know"と同じデリバリーを要求されていることが分かります。"I'm telling you"と強調してセリフを重くしていないのは流石ですね(というのは読み過ぎなのでしょうか)。
直前に「嘘じゃない」という歌詞があり、わざわざ英語で"no lies"となぞっている点が興味深いですね。打って変わって"you"を意識しており、伝えたいことが伝わらないもどかしさを表現したのでしょう。
真実の一部しか見せられないけど確かに真実なのだからそこは私を信じて、少なくとも嘘はない(嘘をついていない"I'm not lying"とは異なる)から。
乃木坂46はエモい虚構で多くのファンを虜にしてきましたが、それは嘘ではなく真実の一部を切り取っただけ、と拡大解釈することもできます。是非はともかく「色々あるけど、信じて」というアイドルの魂の叫びでしょうか。

その他&まとめ

英語のセリフ以外は私より歌詞の解釈に長けている方々に任せます。まあ全体を通してこれからアイドルとして茨の道を歩んでいく人物の心中を秋元さんが語らせているのだと思いました。
「理想が邪魔して真実を見失う」は冒頭のセリフと同じくテイクホームメッセージでしょう。中西さんはもちろんのこと、全ての人にあてはまる言葉ではないのでしょうか。この曲でファン界隈がかなり荒れたこともあり、余計に突き刺さります。
総じてアイドルの素顔を見せた(ように錯覚させる)という演出は秋元さんお得意ですが、中西さんの歌声ならばそれができると確信して「当て書き」したのでしょう。
曲、アレンジ、フォーメーションどれを取っても多くの人の指摘通り「乃木坂らしさ」は感じられないかもしれません(私も激しく動揺しました)が、根底のコンセプトは作り手の目線からすれば乃木坂らしさしかないのが私の感想です。
この曲で様々な人が試されたのは疑いようもない事実となりましたね。

曲は今ひとつ

ここまで歌詞を分析しておいておこがましいですが、曲のクオリティには落胆しました。秋元さんの中西さんや新たな乃木坂に対する情熱は精一杯受け止めたつもりですが、それに相応しい曲が選ばれたとはとても思えません。
アートと自己満足は紙一重ですが作曲に関しては後者なのでしょう。
今回は楽曲の分析なのでここまでにしますが、ジャンル・方向性関係なく、曲がイマイチだったというのもファンの怒りが爆発する立派な一要因だったのではと思ったまでです。5期生加入というキラキラなコンテンツがあったにもかかわらず、総じて暗雲漂う11年目のスタートになったと思いました。
ただ同時にクリエイター側は(この歌の主人公同様)本気なのだということには一安心でした。頑張れ乃木坂46!
(ちなみに5期生は現段階で一ノ瀬さんと五百城さんが気になりますね笑)

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