意外と知らない大麻規制について弁護士が分かりやすく解説【2023年最新】
近年、医療用大麻、さらには嗜好用大麻の解禁が国際的なムーブメントの一つであり、世界中で議論が進みつつあります。
コロナ禍の中タイでは事実上嗜好用大麻が解禁され、物議を醸しています。
他方、日本では大麻使用罪の創設等の厳罰化が議論される一方で医療用大麻を解禁する動きがあるという混沌とした状況です。
個人的には「大麻は覚醒剤と同じで、議論すらタブー」という風潮を脱し、日本でも議論がされるようになったことは進歩だと思います(私はどちらかといえば解禁派です)。
本記事では、現行の大麻規制、制度の問題点、法改正の方向性、CBDとは、といった点を弁護士が分かりやすく解説します。
大麻とは
大麻取締法において「大麻」の定義があり、大麻とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいうものとされています(大麻取締法1条本文)。ただし、大麻草の成熟した茎及びその茎から作られる繊維等の製品(樹脂を除く)と、大麻草の種子及びその製品は規制対象から除かれます(大麻取締法1条但書)。
大麻には多数の呼び方がありますが、マリファナとは乾燥大麻のことで、そのうち花穂から製造されたものがガンジャ、樹脂から作られた濃縮物がハシシと呼ばれるそうです。
部位規制と成分規制
部位規制
日本の大麻取締法において規制対象となるのは、花穂、葉、未成熟の茎等から抽出した成分を用いた製品の輸入、製造等です。
他方、成熟した茎及び種子から抽出した成分を用いた製品の輸入、製造等は許容されています。
このように、現行法は大麻の部位によって規制の有無を変えているため、部位規制と呼ばれています。
原型が残っているような製品はさておき、液体等に加工されていると大麻のうちどの部位が使用されているのか判別できません。
そのため、実態としては成分規制に近い枠組みが取られています。
具体的には、花穂、葉、未成熟の茎等(違法となる部位)にはTHCが含まれていることから、成分を抽出した部位を判別するにあたり、THCの含有の有無が判断基準とされています。
この点に関し、厚生労働省地方厚生局麻薬取締部がロジカルに以下の見解を述べています。
THC検出→違法な部位を使用しただろう、ということですね。
そうは言っても、規制対象外の部位にTHCが全く含まれていないというわけではありませんが。
成分規制
現在、厚生労働省を中心に、部位規制を見直して成分規制の方向にシフトする動きがあります。
つまり、幻覚作用があるTHCが含まれていたら違法、そうでない製品は合法ということですね。
現行法との具体的な違いとしては、未成熟の茎等が由来の製品でもTHCが検出されなければokということになる点です。
大麻規制の根拠が幻覚作用を持つTHCに求めるならば、部位ではなく成分に着目して規制した方がスッキリしますし、CBD製品等の販売業者側もTHCの有無に気を付ければよくなるという点で、成分規制の方がベターとも思われます。
ただ、現在はTHC=即違法ではないため(悪いのは葉っぱ等の部位)、ごく微量のTHCを含む製品も許容されていますが、今後ごく微量でもアウトということになると、有用な製品の販売にまで萎縮効果が働くおそれがある点が懸念されます。
なお、法改正後は医薬品においてはTHCを含んでいてもよいとする方向性が示されています(医療用大麻の解禁)。
私の意見ですが、THCに幻覚作用があるといっても、アルコールだって幻覚作用や脳の萎縮効果があると言われています。
ゲートウェイドラッグの理論(大麻は覚醒剤等の過激な薬物への入り口になるという理論)も信憑性が疑われており、個人的にも疑問があります。
法律において使用可能年齢、販売資格等の規律を正しく整備すれば危険性は少ないと考えますし、管理販売をすれば反社会的勢力の収入源(シノギ)を無くすことにも繋がります。
嗜好用大麻を合法化すべきというには議論が進んでいないと思いますが、安易に厳罰化をすべき状況とは到底思えません。
禁止行為
大麻の輸出入、栽培、所持、譲受・譲渡等は原則として禁止されています。
「使用」そのものは違法とはされていない点は有名ですが、知らない方もいるでしょう。
覚醒剤のように、尿検査等をして違法成分(THC)が検出されても逮捕ということにはならない、ということですね。これまで使用罪がなかった根拠は大麻農家への配慮と言われています。ただし、冒頭でも述べたとおり、現在使用罪を創設する動きもあります。
禁止の例外としては、都道府県知事の免許を受けた大麻取扱者(大麻栽培者・大麻研究者)が大麻の栽培、所持、譲受・譲渡等を認められており、大麻研究者が研究目的で厚生労働大臣の許可を受けて行う場合には、大麻の輸入も可能です。
CBD製品について
CBDとは、カンナビジオール(Cannabidiol)の略称で、大麻草の茎や種子から抽出される成分です。
精神作用や中毒性がないとされており、そのリラックス効果等の有用性から近年注目が高まっています。
国内でもCBD専門店が急増しており、電子タバコ、グミ、クリーム、フェイスマスク、オイル等、製品の形態も豊富です。
上記で述べたとおり、大麻の違法な部位を原材料としていなければ、CBD製品の輸入・販売・使用は合法です。
ただし、輸入に際しては、国のチェックが入ります。
具体的には、CBD製品を輸入する場合、輸入しようとする者は、①証明書(「大麻草の成熟した茎又は種子から抽出・製造されたCBD製品であること」を証明する内容の文書)、②分析書(輸入しようとするCBD製品のロット番号ごとの検査結果が記載された分析書)、③写真等(CBDの原材料の写真、製造工程の写真等)を麻薬取締部に提出することが必要です。
①と③から違法部位が使用されていないことを判断し、②からTHCが検出されないかを確認するという構造です。
このように、違法の疑いがあるCBD製品を水際で食い止めるための仕組みはあります。
しかし、これは法律に明記された手続きではありませんし、当然、輸入以外の場面ではこのような選別機能は働きません。
ルール決めの必要性
法的なルールがあいまいなままでは、突如運用が大胆に変わる可能性や、厳しいルールを定める法律が突然できるリスクを排除できないため、製造・輸入する側も購入者側も、安心して取引することができません。
また、グレーなルールやイメージの業界には、リスクを恐れる大企業が参画しにくいです。
したがって、業界の健全な発展には、平等で明確なルール作りが必要なのは明らかです。
具体的には、国主導でCBD製品の製造・輸入・販売に関するガイドラインを策定することや、製品の検査制度、検査を受けた製品の登録制度の創設等が考えられます。
大麻取締法改正関連の議論では、医療用大麻、大麻使用罪、成分規制等に関するものが中心で、CBD製品関連の議論はあまりなされていません。
CBD議連(カンナビジオールの活用を考える議員連盟)にはこの辺りの取り組みに注力してほしいですね。
おわりに
ここまで、現状の規制や制度の問題点を中心に説明してきました。
大麻・CBD製品普及に向けて活動している人は多く存在し、ネット上での意見発信も盛んですが、専門家が法的な枠組みを整理して説明する記事は多くないかもしれません。
本記事が少しでも読者の皆様や業界の力になれば幸いです。
私も弁護士としてCBD製品の販売等に関するご相談を受け付けております。
https://sekka-law.com/
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