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たねのはなし

こちらは、取組の中で、自発的に立ち上がった「このコミュニティの取組へと参加するお呼びかけ文」をつくるチームが制作したものです。

私はたねです。
たねだと思っています。
 
私には夢があります。
とにかく芽吹きたいの。
 
芽吹いたらどうなるのかって?
…それはわからないけれど、
 きっと今よりは素敵なはず。
 
私はこの茶色っぽい体と、
目と口と、
ちょっと素敵な眉毛を持っています。
 
でも、これだけ。
顔をしかめてみても、
体を揺らしてみても
芽吹いたりはしないの。
 
私の上には、時々雨が降ります。
雨が降ったら、
私は一生懸命、雨を集めます。
雨があれば、もしかして、もしかすると、
芽吹けるかもしれないから。
 
それでもやっぱり、私は芽吹かない。
…私の何が悪いんだろう。
 
最近は、あの雨すらも降ってきません。
どうしたら、いいのかなあ。
私が芽吹いたら、
私みたいに困っているたねに、
雨をふらせてあげるのに。
  
 
ある日、小さい羽虫が
私の所にやってきました。
 
いいね、あなたは!
羽があって空を飛べるなんて、
芽吹くのと同じくらい素敵だわ。
 
私の少しチクチクした言葉に対して、
怒りもせず、羽虫は答えました。
 
芽吹くのってそんなに素敵?
今のあなたも、
なかなかいけてると思うけど
 
そんなわけない。
私は芽吹きたくてたまらないよ!
 
思わず私が答えると、羽虫はいいました。
 
じゃあ、あなたの足を使って、
芽吹きやすそうなところに、
出かけてみたらいいんじゃない?
 
え?
 
私はびっくりして、
よくよく、自分の体を見てみました。
 
どうして気が付かなかったのかしら?
 
私には、足があったなんて!
 
 
私、出かけていってもいいの?
 
思わず羽虫に聞きました。

いいんじゃない。
出かけても、出かけなくても。
 
そういって、
ふぃーと羽虫はどこかに行きました。
 
そうか、私はここにいなくてもいいんだ。
 
私はゆっくり立ち上がりました。
 
少し高い位置から周りを見たら、
私は、つるっとした机の上にいました。

もう少し遠くを見ると、
へこんだり、凍ったり、もこもこしたり、
いろんな地面がありました。
 
たくさん種がいるところや、
いないところも見えました。
 
ねえ、どこに、でかけようか?
 
私たちは、ゆっくりと、
歩き始めました。

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