日本帰国中に犯した大失態
私は昨年の夏、二年振りに日本に里帰りした。
娘をあちこち案内し、彼女の帰国後は自分時間を満喫した。すっかり年老いた両親の通院にも付き添った。全てが順調だった。あの日までは。
その日私は東京で友達と会う最後の約束をしていた。早目に現地に到着。ふと、バッグの外ポケットの中身が何故か心許ない事に気づく。
「家の鍵が無い⁉︎」
東京駅のコンコースでバッグの中を弄る。友と再会を果たしたレストランでバッグをひっくり返してみるがやっぱり出てこない。再会は勿論楽しかったが、時折どよーんとした気分になる。帰宅後、家族には平謝りに謝った。
翌朝、諦めきれない私は前日の足取りを辿る。先ずは何度も通った安らぎのコーヒーショップ。そこに無かったら最寄駅で諦めよう。東京はもう無理。
「昨日鍵の落し物がありませんでしたか?」
私は鍵の特徴を簡単にお店の方に伝える。
「もしかしてこれですか?」
ほっと胸を撫で下ろした瞬間だった。