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キレてダメなら情に訴えかけて......


 引っ越しに伴って、食卓椅子や洗濯機の修理待ちであることは先週のnoteに書きました。

 椅子の座面の張り替えとリクライニング椅子の修理については、今週の火曜日に納品の予定でした。でも、案の定その日には待ち人は来ず。しかも何の連絡もなしに。お察しの通り、そんな事態となって夫が黙っていられるはずがありませんし、実際電話でバトルが繰り広げられていたようです。

 約束は破られるためにあるもの、と達観していた私は、さほど驚きはしませんでした。運が良ければ来るかもしれない、そんなスタンス。なので、火曜日もその翌日もあの若者たちを待ち焦がれるでもなく、引っ越しの荷解き、整理、掃除に集中することができました。

 結局、木曜日の昼ごろになって彼らは突然やって来ました。勝手口のドアを開けると、見覚えのある顔はちょっと恐縮した表情。納期の遅延で、夫がキレて電話をして来たことは、電話応対をした人から聞いていたでしょうから、無理もありません。

 でも、幸いというか、夫は朝から出かけていて留守でした。それが分かったのかどうか、次第に作業をする彼らの様子が楽し気になって来ました。結局、作業を終える前に夫がご帰還。やはり多少緊張感に満ちた雰囲気にはなりましたが、無事に作業を終えられてやれやれ。後は残り3つの座面とリクライニング椅子の納期の確認、その後のフォロー。ゴールはまだ先のようです。

 私にとっての最大の懸案事項は椅子よりは洗濯機の修理がいつになるか、ということでした。夫が問い合わせた時は1週間後、との回答でした。ところが連休を挟んだとはいえ、あれからそろそろ2週間になります。残念なことに、夫の洗濯機への関心は椅子へのそれよりも薄いように思われました。これは長期戦になるかもしれない、と私は半ば覚悟を決めていました。

 ところが昨日になって「明日の午前中にそちらに伺う」というメッセージがサービスセンターから来たというではありませんか!ここ2週間、容赦なく出される洗濯物を手洗いしていた私には願ってもない朗報です。今日の午前中はつい、「まだか、まだか」と派遣されてくるテクニコ(技術者)を待ち侘びてしまいました。この国では約束は破られるためにあるものだと悟ったはずなのに。果たして、午前中にはインターフォンが鳴ることはありませんでした。

 午前中のオンラインでの会議を終えて、昼過ぎから夫は出て行きました。息子も大学に行ってしまったし、またもや私1人がこの家に釘付けです。途方に暮れそうになっていた頃、インターフォンが鳴り、その人はやって来ました。ガブリエル、私にとっての救世主のような人です。

 今回の修理に関し、私には二つのミッションがありました。夫が修理として頼んだのはあくまでもガラスの蓋の取り付けのみ。粉々になって洗濯槽に崩れ落ちたガラスの破片は目につく限りは拾いました。でも底の、回転する円盤と槽の間に入り込んだ細かな破片は、円盤を取り外さないと取り除くことは出来ません。(特殊な工具が必要なため。)プロには簡単な分解でしょう。それを依頼する、これが一つ目のミッション。

 もう一つは、長年の劣化で亀裂が入り、応急処置でテープ留めした排水用のホースの交換。ホースはDIY店で購入済みなので、その場で頼めばやってくれるのでは?という目論見です。夫が自力で交換しようとしたものの、背面を取り外さなければならない構造と分かって断念、新品のホースはそのままになっていました。

 蓋の取り付けは、何てこともなく5分で終了しました。これだけの作業であの修理代。物の値段が主とは言え、ちょっと納得がいきません。そこで上の2点の交渉に入ります。まず円盤の取り外し。ガブリエルが言うには、今日の自分の任務は蓋の設置のみ。円盤の取り外しは洗濯槽の洗浄ということになるので、追加の費用もかかるし別途サービスセンターに依頼して、とのこと。排水ホースの交換も同じ理由で今は出来ないと言い放ちました。

 そんなぁ。。ホースはまだ良いとして、ガラスの破片が怖い事も洗濯出来ない理由の一つなのに。ここはなんとか粘らないとなりません。とりあえず彼が言ったことを復唱して確認します。悲しそうな表情で。それが功を奏したかどうか「上司に相談してみる」と言うではありませんか!その調子!何もディープな洗浄をお願いしているわけではないのだから。円盤を外してくれさえしたら、ささっと残っているガラス片を取り除くだけなのよ、と思いながら。悲しい表情は変えずに彼と電話の向こう側の上司とのやりとりを見守りました。

 結果、元々の料金に追加(これはガブリエルに直接支払う。1000円くらいか。)で、円盤の取り外し、ホースの交換もやってもらえることになりました!

 彼が円盤を取り外すと、案の定いくらかのガラス片が残っていました。汚くなっていた円盤の裏側を洗い、ガブリエルが洗濯槽の底面を磨き、外したものを取り付けて作業は終了。後は雑巾を洗うために2回ほど洗濯機を作動させ(雑巾に底から湧き上がったガラス片が付いてくるはずと)その後で衣服を洗う。それでもまだ服にガラス片が付くような事があれば、本格的な洗浄を依頼してね、と言っていました。

 ホースの交換もサクッとしてくれて、(床は水浸しにはなりましたが)作業は終了。これでしばらくは水漏れの心配をすることもなさそうです。多少の遅れはありましたが、私には気持ちの良いサービスに思えたので、救世主、ガブリエルにはちょっとばかりチップを奮発。

Deus abençoe!  (God bless you!)

との言葉と共にガブリエルは去って行きました。夫よ、何でもかんでもキレれば良いと言うものではないのだよ。。時に相手をおだてたり、情に訴えかけるのも、物事が円滑に運ぶための手段なのだから。(だからと言って、お芝居をしたわけでもないのですが。)

 この洗濯機で家族の汚れ物を洗い続けて何年になるのでしょうか。信頼厚き日本のメーカー(ブラジル製ではありますが)のもの。こちらの製品は二代目です。オシャレなドラム式でも、最新式の乾燥機付きでもないけれど、毎日よく働いてくれました。今回のトラブルで、洗濯機が稼働してくれることのありがたみが身に沁みて、洗濯槽、普段は見もしない背面などきれいに磨き上げてあげました。

 雑巾たちを試しに洗ってみましたが、心配されたガラス片はほんの少ししか出てこなかったので、2回目はネットに入れた衣服を洗いました。2週間ぶりの洗濯機による洗濯、万歳!これで指の指紋も復活してくれるかな〜。。

 今日は嬉しくて嬉しくて、洗濯機の前を通るたびについついガラスの蓋を撫で撫でしている私でした。


【今週のおすすめミュージック】

 Spotifyを徘徊していたら、たまたま耳にしたインストのこの曲。歌詞はなくても楽器が言葉を紡いでる。そう感じました。もちろん、ノラ・ジョーンズもいいですよね♡

 皆様、どうぞ穏やかな週末を。。

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