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smashing! ふたりきりはしりがるで

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。

明日は第四土曜。ひさびさの連休なので俺は浮かれている。今週末は雅宗先輩とこが忙しくてこっちに来られないんよメールが届いたり、卓と優羽はスノボ行くって言ってた。俺たちは特に予定はない。それでひさびさに、鬼丸と二人でゆっくりすることにした。

夕診後に、飼い主さんに渡し忘れたサプリを、鬼丸は用事のついでに届けてくるって出掛けた。俺が行くからと言ったら、千弦は旨いご飯を作ってて欲しいんだ。鬼丸も俺と「ゆっくりする」ことを、かなり楽しみにしてくれてるらしい。

久しぶりにちゃんとしたご飯を作る。鬼丸の好きなもの。旬じゃないけどズッキーニの辛味噌炒めや定番のぬか漬けも出す。牛尾さんが差し入れてくれたほうれん草は、蒸してから胡麻和えだ。頭の中でシュミレーションしたら、うん、これは全部おつまみだな。

ちゃんと腹にたまるものも考えよう。冷蔵庫開けて物色。作り置きはこないだ皆が泊まり来た時出しちゃったからなあ。さっと出来てでも重めであったまるもの。マカロニの買い置き、牛乳、玉ねぎ、ベーコンに小麦粉…ならば二人とも大好物のマカロニグラタンもだ。

「…ただいまー!千弦ごめんな遅くなって」
「いいタイミングだ!もうじき出来るから、座ってて」
「うわすごいこれ!こんなに作ってくれたのか」

リビングのテーブルにみっしり並んだ料理の数々。たくさんあってすごく嬉しいけど、これは皆が来た時の量だな。グラタンに至ってはたっぷり4人分くらいの耐熱皿。うん俺も作っててそう思った。鬼丸と顔合わせて爆笑した。最近少人数用の量が思い出せない。
手洗いと着替えを済ませた鬼丸が素早くソファーに座り、嬉しそうに料理を小皿に取り分けてくれてる。鬼丸がこっそり冷やしてた「不ニ才」もテーブルに鎮座。芋焼酎がちょっとだけ苦手な俺も呑めるようなすっきりしたやつ。そしてそのとろけそうな笑顔ですね。

浴室前のバスマットからようやくリビングにやってきたリイコには、茹でただけのマカロニをご馳走してあげる。ささみほどじゃないけど、嬉しそうにフンスと鼻を鳴らして味わって食べている。ソファーの脇は凭れられるし、絨毯が気持ちいいらしくリイコお気に入りの場所だ。

二人でいる時の定番は配信番組を見ること。鬼丸が好きなお笑いコンビはとても仲良しなせいか、番組も見ててすごく楽しい。ポンコツなとこがまたいいんだよね。鬼丸が口いっぱいに熱々グラタン頬張ってるから、何言ってんのかわかんないな。俺もな。

ソファーで二人でくっついて座って。コタツよりちょっと寒いけど、自由度は高い。なにより尻が重くならないよな。じゃあ何か千弦は俺が尻が軽くていいと思ってるのか。いやその意味合いの取り方。鬼丸の攻撃をさらっと受け流して、そのまま細い腰に腕を回してくすぐってやる。うひゃあとか変な声で喚くけど、然るべきことを成している時は、意外と鬼丸は声ちっさかったりするんだ今関係ないけどな。鼻先に鬼丸の首筋がちらつく。ムラってしたから軽く噛んでやった。


軽快なほうの、尻の軽さの意味ね。
いやでも軽いくらいが全然いいんだ。俺に対してだけで。




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