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smashing! ひかりあふれるこころで

大学付属動物病院獣医師・設楽泰司。週一で佐久間イヌネコ病院に出向している理学療法士・伊達雅宗は彼の先輩で恋人でもある。


設楽家末弟・泰良は昔から、5つ上の五男・設楽泰司に懐いていて、逐一近況を聞きたがる。着るものやゲームも、昔から設楽と同じものを欲しがりそして同じ大学にも入った。

「俺さ学部違うけど、あの伊達さんの知り合いって人いっぱいいるんだね。こないだなんか飯奢ってくれたよ」
「…まあ、いろいろいるからなあ」
「知り合いだけじゃないの?」
「あの人モテたからな」

ふうん。泰良がテーブルの上の呑みかけのチューハイを手に取る。あの人は少しニイちゃんの好みから逸れてる気がするんだよな。テレビのお笑い番組を見ながら、泰良はそう呟いた。

「ニイちゃんはさ、あの人のどこが気に入ったんだ?」
「…うーん…どこって言われてもな」
「そんな曖昧なんか」
「気がついたら、だなあ」

いきなり泰良は設楽のグラスの中にチューハイをぶっ込んだ。あまだビール残ってたのに。確かこういうことをしてくるのは佐久間さんだったなあ。かまわずグラスをあおる設楽に、泰良はあきれ顔で続けた。

「たしかニイちゃん、佐久間って人が好き言ってなかった?」
「言っ…あれ、タイラに言ったか?」
「酒呑むと言ってた」
「成程」

佐久間さんも伊達さんもどっちも好みだ。設楽は泰良の頭をくしゃっと撫で、タイラに心配かけちゃったかもな。設楽によく似た面差しの泰良はそれを聞いて目尻で笑った。

「じゃピザ奢ってよ。いまLサイズ2枚注文すると1枚無料なんだ」
「ちょっと少なくないか」
「すぐ夕ご飯だから大丈夫だって!」

泰良が嬉しそうに携帯に指を滑らせる。うまいこと奢らされたな。設楽は苦笑しながら追いビールを取りに台所へ向かう。そう、記憶の奥底でずっと揺れてる眩い光が佐久間だとするなら、全てを包み込まれ融け合っていく光、それが伊達なのだ。どっちも設楽にとって「指針」であることには変わらないのだ。ずっと。

ポケットからメールの着信音。取り出そうとした携帯に、設楽の指を飾る指輪が当たり、こつっと微かな音を立てた。


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