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佐久間イヌネコ病院 luv.38 にあわないがにあう

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雲母さんは伊達さんの恋人でパートナーで、その伊達さんとオレも付き合ってて。オレたちは三人で二軒の家を共有している。三人暮らし、人にはルームシェアとか言っとけばスルーしてもらえるから問題はないけど、確かにちょっと奇異な関係ではある。

伊達さんが夜勤や佐久間さん達と用事があったりすると、よくオレと雲母さんと二人で過ごしたりする。一緒に買い物行ったり飯を作ったり。基本、三人でいる時と変わらず。ただ違うのは、オレ達はまるで兄弟や親友のような間柄だってところ。

今日は雲母さんがサラダを作る。雲母さんも伊達さんも野菜が主食みたいなところがあって、オレは今までの人生ほぼ肉と炭水化物だったような気がするから、実家に戻った時に驚かれる。あんたがピーマン食べられるだなんて!母ちゃんのあんな驚いた顔初めて見たな。

郊外の伊達さんの平屋の庭には簡易温室が置いてあって、ピーマンとかが冬でも獲れるのでほぼ野菜を買うことはない。こっちの雲母さんのペントハウスには水耕栽培?の謎の機械が置いてあって、ちりちりレタスなんかが植っている。なんだこれ。なんて便利なんだ。

雲母さんがひとつひとつ、ワイヤーバスケット片手に収穫してサラダにする。ドレッシングもお手製で、ちゃんとなんとかオイルが入ってる。野菜のビタミンはオイルと一緒に食べないと吸収されないんですよって雲母さんは言ってた。その情報を母ちゃんに流したら、次の週実家のノンオイルのドレッシングが消えてたな。

野菜を収穫したり、料理の下拵えなんかもそうだけど、雲母さんの外見からは一番かけ離れている気がしていた。シュッとしててうっすくて美人でメガネでスーツ。すべすべの指先は荒れているのなんて見たことがない。それでもそんな彼が家事で奮闘していると、それがまあ、なんて健気に動き回るんだろうって、そのうちすごく似合って見えてくるから不思議だ。

今日はオーバーサイズのトレーナー的な出立ちでキッチンに立つ雲母さん。オレはそれとなく気を配りつつも、今ではほとんど手を貸さなくてもよくなった。すごいな日々ラーニングしてるな。オレも雲母さんからいろんなこと教えてもらえて、お互いにそれを間近で感じられる。

「設楽くん、何かお肉の美味しいのを…」

あ、オレの得意なやつのリクが入った。こうやってオレにもちゃんと、花を持たせてくれる。雲母さんは、ほんとに。

「御意」

その指に光るのは、オレのと「同じ石」を抱く白金。





/設楽泰司

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佐久間イヌネコ病院
今月はお休みが多かったので
その分の休診日を減らしましたが
特に…いつも通りでしたね
アレレ?

(院長)


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