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smashing! むしんになれないオレの

大学付属動物病院獣医師・設楽泰司。週一で佐久間イヌネコ病院に出向している理学療法士・伊達雅宗は彼の先輩で恋人。伊達は佐久間の病院の経理担当である税理士・雲母春己とも恋人同士だ。

今週に入って冷え込む日が続いている。オレら三人は今週ほぼすれ違いな時間割(?)によって、三人が揃うことはまずない。こういう場合はどっちの家を使っても可なので、オレは今週、伊達さんの平屋にいることにした。

朝から畑の枯れたやつを片付けて、畝を綺麗にしておく。そして庭全体の掃き掃除。あんまりやらなくてもいいんだけど、この家が綺麗に整ってる方がオレが居心地がいい。空は快晴、風もなくていい日和なのになんだろ、キンキンに冷えてるな。ビールじゃないんだから。言ってて呑みたくなった。集めた落ち葉やなんかで焚き火をする。一斗缶が一番便利なんだこういう時は。お洒落じゃないけど、実用的でオレは結構気に入っている。

台所から持ってきた焼き網の上、雲母さんがお取り寄せした北海道の一夜干しのすげえイカ、あとは伊達さんが貰ってきたすげえシシャモ。ぷりぷりの。そしてキンキンに冷えたビール(高いやつ)を持ってきたわけなんですよ。庭に置いてあるベンチの側、網の上には海の幸。二人とも今日は忙しいらしいが、オレは何故かシフトがぽっかり空いての休日。久しぶりのソロ焚き火飯。

こんなふうに、一人きりになることは本当に珍しくて、ちょっと落ち着かなかったりもする。うっかり誰かに話しかけそうになるけど、この奥まった庭にはせいぜい、向かいの地主さんとこの猫のトメとその子猫くらいだ。柴犬のフクもたまにリード抜けして脱走して畑で転がってたりするけど、そのフクを捕まえるのがけっこう大変なんだ、放っとけないし。伊達さんと挟みうちで捕まえて地主さんとこに届ける。それで貰い物が増えてるっていう。

焼き物もいい頃合い、一夜干しのイカのいいとこは、醤油やなんかがいらないとこだ。ビールとイカ、そしてシシャモの脂をゆっくり楽しむ。身がよく締まってて美味い。ていうのは、これはオスなので卵を持ってない。オレはその方が好きだったりする。

美味い物食ってて、心底綺麗な色の空を仰いで伊達さんの高いビールを味わってても、なんだか味気ない思いが先立って、気が散漫になる。ひとりは、やっぱり物足りない。こんな時はたくさん呑む、そして作り置き飯を鬼のように作り置く。あとは掃除しまくる。と思ったけど呑むとダルくなるから掃除は却下、普段は作らないような凝った飯を作ろう。あの二人の喜ぶ顔を想像すると、やっぱり嬉しい。

そうだな、伊達さんのビール、もう少し呑んでから動こう。寂しさを払拭できそうなのは無心の動き。もっとつまみを作ろうか、とかオレはまだまだこんなふうに、煩悩だらけだから。

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