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smashing! おまえのきっすいにふれ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。
お盆明け17日まではお休みです。


午後、今日は二人でウミノ湯に。風呂上がりに入ったウミノ湯食堂で今日入荷したというアワビを堪能した。ふぞろいだからお値打ちなんだ。羽海野の恋人の九十九は海洋学の教授だったせいか、海産物のルートが玄人並みである。

旨い刺身とレモンサワーでまさに命の洗濯をし、日の落ちかけた商店街を上機嫌で歩いて帰宅。少し蒸し暑く感じるリビングをエアコンの冷気が「擬似」爽やか空間へとチェンジしてくれる。そういや銭湯も「擬似」温泉になるのかな、すっごく気持ちいいけどな。喜多村が冷蔵庫からビールとさつま揚げを出し、ソファーの佐久間の隣に座った。

お盆だからどこもすいてて助かった、佐久間がグラスにビールを注ぐ。あんまり泡を立てないほうがビールは旨いんだ、この二人の持論である。今日はこれから楽しみにしていた舞台のライブ配信があるので、先に風呂やなんかを済ませたかったのもあったのだが、ウミノ湯でまさかの最高級クロアワビにエンカウント。あの銭湯の食堂はとんでもない。

自宅のリビングでこれも「擬似」舞台観劇体験。酒もご飯も自由に楽しめる。自由度がすごいよね、臨場感もあって。生には生の良さはもちろんあるけれど、少し距離を置いて楽しみたい大人にはこのほうがいい時だってある。

この俳優さんマンガにそっくりすぎるな!喜多村が嬉しそうに声をあげる。領域を展開したりされたり、ビジュアルにせよ演出にせよ(演技力のほどは残念ながらよくわからない)クォリティの高い舞台に出会うと精神的に得した気になる。どの何が精神的かはよくわからないけど。あっという間の前半終了、えもう休憩?そんな経った?佐久間はグラスを空けもせず見入っていたらしい。俺もっと酒とつまみ持ってこよっと。佐久間がテーブルの上を見ると、皿は全部空だった。気づかなかった。

後半が始まるまでの間、喜多村は手早くゴーヤチャンプルを作り、佐久間の焼酎と共に運んできた。自分のために作ってくれたその気持ちが、心を温かく照らしてくれる、佐久間はそう思う。二人で配信見ながら温かいゴーヤチャンプルを頬張り、好きな焼酎のロックで味わう。何にも似てない、これは「擬似」とはまた違う、混じり気のない「生粋」だ。

すごく面白いな。面白いね。いつのまにか隣の喜多村の指先と佐久間のそれは、隣にいる、その存在を確かめるようにソファーの上で触れ合い時折絡み合う。それもきっとこの二人の「生粋」。



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