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smashing! きみのかおりとマウントと

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗。彼は佐久間の病院の経理担当である税理士・雲母春己の恋人だ。


ちょうど設楽の夜勤シフトと入れ替わりで、雲母ハルちゃんが平屋に帰ってきた。俺が出迎える前に玄関で設楽といってらっしゃいとおかえりのチューしてるし。伊達さんとは今までしてましたから。ニヤリ笑いで設楽が出かけていった。

お土産があるんですよ。ただでさえハルちゃんは旅行時は重装備、ていうか荷物多いのに、その上お土産まで。ウチらの間での土産は大抵酒か名産品なので、あまり嵩張らないのが救いなんだけどね。ハルちゃんの荷物を中に運んで、お土産を冷蔵庫入れたりお酒セラーに並べたり。着替えのついでにお風呂に入ってきますね。さかなさかなさかな♪ハルちゃんはなにやら不思議な歌を歌いながら風呂場に消えてった(お土産屋さんで流れてたらしい謎のキャラソン)。

さて夕飯の支度でもしようかねえ。ハルちゃんのお土産は白エビの塩辛と海鮮キムチ、あと俺の好物のウニ。粒ウニのうんまいやつだよ。大丈夫これ設楽にもちょっと残しといてやる。ああ、これだけあったらなんも作る必要なくね?じゃああとはちょっとあったかいやつ…ご飯を炊き込みに変更してシラスと青紫蘇とあさつきと。

風呂上がりのハルちゃんと居間で夕ご飯。炊き込みがウケてすごく喜んでくれてる。僕のお土産全てに合いますね。そんでハルちゃんのお土産の地酒。聞かない酒蔵のだけど、ものすごくフルーティで日本酒ぽさ全然なくて旨いんよ。こうしてハルちゃんとサシでご飯は久しぶり。テレビつけるのももったいない気がするけど、なにかしら賑やかしがあったほうがいい。柄にもなく緊張しそうなんよね。テレビつけて、あ伊達さん今日はじめてのおさんぽやってますね。ワンちゃんネコちゃんがいっぱい出てくるやつ。ハルちゃんの好きなジャンル。盗撮特集の次に。かわいいですね、ウンそうね。ご飯平らげてあらかた酔いもいい感じに回って。そろそろお膝に?その声で俺はハルちゃんの膝枕に横になる。

ハルちゃんの感触が直に感じられる。だって今の時期ステテコだしねえ。風呂上がりのいい匂い、あと、ハルちゃんの匂い。なんだろ、香水でもなくてアロマのでもなくて。何か気になりますか?小首をかしげたハルちゃんにそのことを伝えると、ニィ、と笑って。夜来香という香水を夜な夜な飲んでいるんですたっぷりと。ヒィ。なんてウソですよん、だって。可愛く言っても怖いよハルち。

大丈夫何も飲んでませんから、でも僕の香りがあなたの心を掴めたのならそれは光栄ですね。長い指先が俺の輪郭辿って唇をなぞって。ああ、やっぱりいい匂いする。そういえば設楽も言ってた。家中がいい匂いするんだ、って。

そんな伝説のなにかしらを摂取しなくてもウチのハルちはいい匂いなんよ。だって。伝説なんかよりも希少、美麗にして聡明。時々ちょっとズレちゃうとこも愛嬌あってすごくいい。そして、気づけば俺の上に乗り上げてて、貪られる感じになるこのマウンティングの妙。逆じゃね?全く照れもなく躊躇いもなくただ愛を分かち合う。そうこれがハルちゃんのね、一番いいとこなんよ。


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