見出し画像

smashing! みずもしたたるいんちょう

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。

夕診後、掃除を兼ねて入り口の周りや植木、簡単な菜園にも満遍なく水を撒く。このあいだ新しく買ったガーデニング用のホースが俺的に当たりだった。アタッチメントがついていて、数種類の放水が可能なんだ。スプリンクラーみたいに広がるのがすごく好きで、うまいこと日の光が差し込むと綺麗な虹が出たり。太陽と水のコンビはこんな奇跡を見せてくれたりする。

後ろから声を掛けられたのに気づけず、調子に乗って水撒いてたら後ろから、ひゃあ。あしまったすいません!振り返ったらウチの可愛い院長がずぶ濡れになってた。すまん気づけなくて。いやこっちこそ油断してたわ。この時期涼しくなって丁度いい。けっこう中までいってんな。鬼丸が笑いながら白衣を脱ごうとした。俺は反射的にその手を止めた。ていうか掴んだ。

脱ぐなら上行ってからだ。俺の強い視線を鬼丸の???な表情が受け止める。わかってないにも程がある。このへんはウチの領域だからあんま人通らないけど、だからって領域だからって展開するかもだから油断はダメだ。夏に油って書く輩もだ。千弦この世界じゃ領域は展開しないけど、ビチョった白衣脱ぐくらいいいじゃん。ちゃん下着てるしさほら。

「…Tシャツとかそんなん全裸と同等だからダメだ」
「ぜんら」
「首手首足首、その他の肌は全裸カウントだ。ほら二階行くぞ」

空いた口が塞がらないって顔も可愛いんだからあんまり外でやるな。誰が見てるかわかんないぞ。そもそもお前が水撒いてこの(略)。ぶつくさ言う鬼丸を強制的に二階への外階段に進ませながらホース片付けて新聞受け確認してああ忙しい。それでも、階段から振り返った景色は夕日の沈んだ後の薄闇にきらきらと水滴が光って、それはもう美しくて。数分で終わるこの瞬間は何よりのお楽しみ。でも鬼丸のこんなレアなずぶ濡れ姿は、それより数倍俺のお楽しみだ。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?