smashing! ひとんちなのにえんりょなく

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして伊達は後輩の設楽泰司とも恋人同士。

オレと伊達さんは今、佐久間さんと喜多村さんの自宅で寛がせてもらっている。当の二人は犬のリイコさんと共に、喜多村さんの実家に遊びに行っちゃったんですよ連休ですし。

昼ご飯を食べさせてもらおう、そう言って伊達さんはオレを連れて仕事帰りにここ来たわけなんだけど、二人の予定を知り帰ろうとしたオレらに、意外な来客があるかもなんだ、と喜多村さん。今日は雲母さんは白河先生のとこに行ってるし、伊達さんとオレはそんなこんなで、何故か佐久間さんたちが戻るまで留守番することに。

何度も泊まらせてもらっているから、もうここも実家だな三軒目の。大事なもの以外はどこに何があるか周知しているので問題ない。冷蔵庫の中身と入浴剤がちょっと違うだけで、逆に佐久間さんのテリトリーにテコ入れする感じがちょっとだけ背徳的でオレはあらぬ感じになる（喜多村は？）。

伊達さんも気が楽なせいか、まあいつもの感じ以上にゆるキャラみたいなってて、佐久間さんの部屋着借りてるのもあって、いつもの感じ以上にエロ可愛いですね御意。しかしながらまだオレのオノレを開放するわけにはいかない。一宿一飯の恩義のために家事を一通りやっとくのがオレの流儀。二宿十飯くらいになりそうだけどな。

掃除が行き届いてるせいか、リイコさんの抜け毛くらいしか取れないな。洗濯して風呂掃除して伊達さんを風呂放り込んで、オレは夕飯の支度をする。牛コマにネギ、冷凍うどんが目についたから肉うどんにするか。冷凍庫にあったアジフライも頂いとこう。

リビングに食事運んだらあとはビールでいいか。風呂から上がった伊達さんがうわあいい匂いね、嬉しそうにソファーに座る。配信なに見ますか、バズライトなんとかのやつ、御意。ここん家ウチと同じくらい色々入ってるから助かる。あ七味きつかったんだろうか、うどんをかき込んで伊達さんが少しむせている。

カシュッ、缶を開ける音が心地いい。場所が変わるだけで新鮮に映るもんだな。伊達さんの箸を使う仕草が可愛い。ドライヤー面倒で半分濡れてる髪も可愛い。あー何でも可愛い。あ、これは佐久間さんのオーラでも残ってんのかなここに。ウチが家中雲母さんの香りが漂ってるみたいに。おまさっきから気味悪いわ、伊達さんがちょい引くくらいにオレは変態み出てるらしい。自覚はしてるけど。

このアジフライすげえ美味いですね。それたぶん佐久間の兄ちゃんからのだねえ、伊達さんなんでわかるんですか、そしたら、伊達さんの出勤日に高い確率でお兄さんからの荷物が届くので、その都度御相伴に預かっているらしい。そして貰ってくると。そりゃ知らんかった。

他に隠してることないですか、詰め寄りフェイスで迫ったらすげえ嬉しそうにしてる。オレ最近気づいたんだけど伊達さん、けっこうMっ気あるのでは。伊達さんM属性なんですか、そんなオレを伊達さんはひらりと躱しながらビールを一気飲みする。

垂れた雫の行き先をオレの舌先に留めたくて、急いでその喉を唇で辿る。リビングのこの照明の感じもソファーの背もたれもウチとは違う、だけどなんだろ、この家の雰囲気なのか。何しても赦してくれる感が半端なくて、理性もなにもあったもんじゃない、邪魔な遠慮や罪悪感が消えちゃって、心が軽くなって。

人んちなのにしたい放題だなんて。すみません、佐久間さん。