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smashing! ウーとバーでもみたしたい

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。


午前中で終わるはずの水曜。延長戦にて数時間押しで終了。慌ただしい一日がようやく終わって、白衣やなんかだけをさっと着替え、佐久間と喜多村はリビングでそれぞれ脱力していた。重症の子は全然いなかったからそれはよかったけど、何故か待合室から溢れるくらいの患畜ちゃんズが。満員御礼、ていうか千客万来、違う気するけどな。

昼食兼夕飯はウーでバーなところに頼んで、届くのを待つことに。いっぺん食べてみたかった諸々をオーダーしたため、少しばかり遅れるらしいがまあいいか。

脇目も振らず過ぎ去った一日、疲れた、といえば疲れたけどそれより、あんなに沢山の飼い主さんに頼りにされてるんだなあ、そんな感慨のほうが大きくて。ここで開業したの正解だったかもな、喜多村が励ますように佐久間に言うと、俺一人じゃこうはいかなかったよ。佐久間は少し照れ臭そうに、そのカッハーブラウンの目を伏せる。

お前がいてくれてよかった、そんな言葉が二人の心の中に湧き上がるけど言わないでいる。そんな終了みたいな台詞吐くのはかなり当分先までお預けだから、今は今の感謝を直に伝えられたら。喜多村が腕を伸ばした先には佐久間の手、どちらともなく絡め合う指先は暖かくて。

そしたら同時に腹が鳴って、とにかく飯だな今は。喜多村は吹き出しながら冷蔵庫に軽い酒を取りに行く。外からバイクの軽いエンジン音。あ来たんじゃないかな、玄関に向かう佐久間の足取りは軽くて、今日頼んだ諸々のちょい贅沢ディナーを、どうやって喜多村に沢山食わせてやろうか、そんなことばっか考えているのだ。


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