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smashing! まつかれらのせわをやき

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして最近、伊達の家に一緒に住み始めたのは彼の後輩、設楽泰司。


今日の夕飯はなんだろう、暇な時は大抵そんなことを考えながらやり過ごしたりするけど、好物のことも考えられないような状況になる時もある。概ねオレらの職業もそうだったりする。

伊達さんがいない日は何故か病院が混みがちになる。俺いると暇なんのよね、あの人ハッタリじゃないとこが怖い。幸い獣医師は足りてたから患畜を待たせなくても済んだし。ちゃんと一頭一匹ずつ丁寧に診察したい、与えるストレス少なく手早く、それがオレらの信条なんで。

それでも1時間押しくらいで上がれてさっと着替えて駐車場へ。車の中で伊達さんたちにメッセージを入れた。薄暗い車内、携帯のパネルがぼうっと光り浮かび上がる。画面に「おつかいおねがい」の返事が。あれとこれとそれ、御意。

今日は伊達さんの平屋に戻る日なので、道中大型スーパーも数件あり、こういう時は助かる。コンビニでもいいけど、節約もしておきたい。別にオレが大家族出身だからという訳じゃないけどね。結局いつものいたどりショッピングモールに寄る。結構遅くまでやってるしタイムセール狙いのお客さんもたくさんいるし。賑やかな方が楽しいし気が楽だ。

牛乳、生ハム、ハードブレッド…これまだあったような気がするけどまあいいか。こういうのはあっという間になくなるからなウチは。生ハムとチーズはとにかく切らさないようにしないと、あの二人の主食みたいなもんだから。オレ毎回買い物の度にコレ言ってるから、よく笑われる。

家出てからは自分のためにしか買い物ってしなかったけど、誰かと一緒に住むようになると、途端に世話焼きモードが発動するようになった。あれだな、実家にいる時な気分だ。弟の泰良は5つ下で、父ちゃん母ちゃんは仕事で留守が多かったから、けっこうオレが面倒見てた。あとばあちゃんと。

今は7つ上の伊達さんと、4つ上の雲母さんを面倒見させてもらっている、ことになるのだろうか。面倒見るってオレが言うと語弊あるな、世話焼かせてもらってる、の方が自然かもしれない。

放っておいても全然平気な大の大人、そう分かっていてもオレは放っておけない質。だけどあの二人はそれを心底嬉しそうに受け入れてくれている。これがオレの望んだ「形」なんだとしたら、希望みたいのが思わぬ形で叶ってるということなのか。

車にレジ袋積み上げて、今しがた試食して美味かった鶏の竜田揚げを忍ばせて、目と鼻の先の我が家へ。もう一杯呑んでる頃かなどうだろうな。竜田揚げ間に合うといいけどな。十中八九大喜びするあの二人を想像してたら、オレもついつられて笑った。

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