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smashing! プロテクトはきょうりょくに

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして二人と一緒に住み始めたのは伊達の後輩で恋人、設楽泰司。

長めのお休みの後に待ってるのは怒涛の連勤。あでもねえ俺は日勤ばっかりだからどってことはない。朝出て夕方帰って、すごく規則的な生活になるから、サイクルとしては一番いいのかもね。

その代わり、ってわけじゃないんだけど設楽が逆に夜勤多め、雲母ハルちゃんは白河先生と仕事で少し遠方に行かないとみたい。暫くの間みっちり三人でいたから、そりゃ物足りないの何の。ここで寂しいとか言おうものならあの二人、無理してでも時間合わせようとするからねえ、我慢我慢。

そんなわけで、今午前4時ですよ眠ういいいい。ていうのは、弁当を作ろうと思ったわけですよ弁当。三人分ね。量もあれだけど揃ってご飯が難しいなら、と思ったから。肉巻きとか卵焼き、鶏と白身魚も揚げて、ハルちゃんの好きな甘辛いタレがけにして。キャンちくとブロッコリーのナムル、あとはそぼろご飯でいいかね。ハルちゃんちのキッチンは空調も防音もしっかりしてるとはいえ、二人を起こさないように慎重にことを運ばないとね。

出来上がったおかずやご飯をランチボックスに詰めてく。設楽のは二段重ねの特大。肉多めにして詰めても詰めても埋まらないっていうね。ハルちゃんのは普通サイズ。ただし海苔をみっちり敷き詰める。保温スープマグにはオニオンスープ。ん、こんなもんかねえ。自分用には残ったやつ全詰め、ご飯はおにぎりにして。なんか手早く作ったにしては一番美味そうに見えるんよね。

朝ごはん用にトースト仕掛けてたら設楽が起きてきた。なんかすごくいい匂いしますね、目敏くランチボックスを見つけて、あーとかおーとか、擬音を発している。コーヒー淹れようとしてた俺を後ろからハグして、弁当すいません、お礼言いながら下半身擦り付けるのやめて。

おはようございます!そしてハルちゃんもやってきた。朝シャワー浴びるのが習慣なんで、朝からシトラスゥ~な香り漂う。ハルちゃんおはよいい匂いだねえ、ハルちゃんは俺にキスした後、バックハグしてる設楽ともキス。お弁当ですねいい匂い!両手でランチボックス抱えて嬉しそうにしているハルちゃん。これよこのリアクションなのよ、俺の異議申し立てに設楽がニヤリ笑いで返してくる。

三人での朝ごはん。トーストとベーコンエッグとコールスローにハッシュドポテト、簡単になっちゃったけど、やっぱり設楽とハルちゃんと食べるのは特別。設楽が、口一杯に頬張ってるから何言ってんのかわかんないけど、多分次はオレが作りましょうか、そう言ってんだろうね。僕はその代わりお土産を本気で収穫してきます、力入ってるねえ、何と言っても白河先生との出張だから、美味しいものだらけらしいの。

楽しみにしててください、二人して俺に向かって嬉しそうに微笑む。ああ弁当作ってよかったん、俺の手作りで、二人に(もしくはつまみ食いするだろう白河先生にも)ある意味プロテクトをかけられる。そしたら。

俺の不在に誰も、この二人に近寄れないといいねえ。なんて、そんな意図なんて、誰も知らなくてもいいことなんよ。喉の奥で笑って、心の中に仕舞い込んじゃう。そんな早朝。

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