見出し画像

smashing! しなやかなそのすがたを

大学付属動物病院獣医師・設楽泰司。週一で佐久間イヌネコ病院に出向している理学療法士・伊達雅宗は彼の先輩で恋人。伊達は佐久間の病院の経理担当である税理士・雲母春己とも恋人同士だ。

ちょっと遠くの街に出張、日帰りのはずが時間が押したので研修先でホテル用意してくださったんだが、なんだろ、一応ダブルなのかなこれ?部屋にみちみちサイズで距離感がおかしい。

「うひゃあスゲエねナニコレ新鮮~」
「…カプセルみたいですね」
「ハルちに見せよっと♡(カシャーカシャーカシャー)」

ホテル全然空いてなくてダブルで申し訳ない、病院のスタッフの子が平謝りするのを大丈夫、と言ってありがたく好意を受けたんだが、これってイマドキのお洒落系、ミニマムホテル?でも綺麗だしベッドもシーリーだし風呂は大浴場だけど温泉だしアメニティも揃ってるし。ただ「狭い」んだ。これが売りなんだろう。

伊達さんはさっきからすげえワクワクウロウロ、ちょっと目を離すとロビーとかカフェとか見に行って騒がしい。焼きたてパン朝食食べ放題なってる!それは聞き捨てならないが、とにかく風呂入って落ち着きましょうか、大浴場に伊達さんを引っ張っていく。

明日の朝食べ放題行きましょう、そろそろ深夜だし夕飯もスタッフの子らに食べ過ぎなくらいご馳走になったんで、大人しく寝ることに。ドアは密閉度がけっこうあって音が全然聞こえてこない。ただ、ほぼ壁とベッドが四方密着ってのは泊まったことないから面白い。オレの実家の部屋でももう少し広いし。

「隠れ家みたいだねえ」

小さな間接照明、梁のある凝った作りの天井、ほんとどこかの鄙びた隠れ家みたいにも感じられる。密閉系狭小空間てのはこう、ムラムラするように出来ているんだろうな、楽しそうに天井を見上げキョロキョロしてる伊達さんの頸に顔を埋める。

「おまここ筒抜けなんない?」
「…伊達さんが黙ってれば問題ないです」
「そらそうだけどさあ」
「なんだか今日は髪ぺったりですね」
「ああ、大浴場にあったシャンプーそのまま使ったん」

いやそれシャンプーていうかその後の。泡立ちました?んや全然。それ多分コンディショナーかと、後でもっかい風呂行って洗い直しましょうか。他愛無い話しながらもその体を隈なく触れることのほうに気を取られて、部屋狭いだの壁薄いかもだの、どうでもよくなって。

オレの上で好き放題腰動かす、ともすれば食われてしまいそうな、その勢い。いい眺めだな。四方はあれだけど上が、天井が高いってことが、こんなにこの人をしなやかで、蠱惑的に見せるものなのかと、今にも持ってかれそうな意識の波に翻弄され、つくづく思った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?