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smashing! ふきのとうはなさくころ

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。彼らの友人、小越優羽と結城卓。彼らは同性で恋人同士。小越は売れっ子の若い庭師。結城は元不動産会社エリート営業。

大寒は「寒の中日」という最も寒い日のことを指す。そう称される今日は、小越優羽の誕生日だ。お正月の神様がお帰りになる日だと、小越の実家や昔からの庭師仲間の間では、基本仕事を休むことが多い。

佐久間イヌネコ病院屋上広場。普段は外階段からも登れるようにもなっていて、友人たちや来院した飼い主の方々にも解放されている。今日ここを訪れたのは佐久間達の友人、小越と結城。日当たりのいいこの場所は二人のお気に入りで、のんびり過ごしてみたり、階下の佐久間や喜多村になにか食べさせてもらったり。そんな感じでやってきた二人、急に小越が屋上に置かれている観葉植物が気になってしまい、休みだというのにいろいろ世話し始めた。

「あ、下行って枝とか入れる袋もらってくる!」
「ありがと卓!助かるー」

屋上からの通用口の扉を開けると、昼過ぎなのにいい匂い。階下では佐久間がキッチンでなにやら仕込んでいるようだ。リビングにいた喜多村が結城を見つけ、嬉しそうに手を振りながらやってきた。

「すぐるん上寒くなかったか?なんか飲む?」
「飲む!あとさ葉っぱのゴミとか入れる袋…」
「上、持ってくよ」

結城にミルクティーを淹れてやり、喜多村がゴミ袋と植木鋏を持って屋上に上がると、小越はあらかた片付いたプランターの周りをチェックしていた。

「ありがとな優羽。下行こう!」
「すいません千弦さん、もう終わるから」
「あとこれ、俺と鬼丸からね」

小さな手提げ袋には、綺麗に包まれたおそらくはゲームソフト。小越の大きな目が見開かれ、わああああ千弦さんんん!小越がぴょんと喜多村に飛びついた。土だらけの手で。

「いま下で鬼丸が大急ぎでケーキ…の代わりに、フルーツサンド作ってるよ」
「ほんと !? 俺大好きなんだ!」
「その前に…鮭のアラと大根の煮付けで一杯な!今日二十日正月だもんな」
「すげえ!」

屋上まで様子を見に来た結城は、そっと扉を閉め階下へと戻った。大人の多かった家の中で育ったせいか、小越は本当は人見知りで、あんなふうに人に懐いたりしたことがなかった。だからこそ、結城はものすごく誇らしいと感じた。ああ、本当にあの二人は優しいんだ。自分らのことを丸ごと受け入れてくれている。

「やっぱ、俺の心眼に狂いなし、だな」

そろそろ二人を呼んできてくれるか?支度のできたらしい佐久間の声に急かされながら、結城はちょっとだけ鼻をすすって、再度屋上への階段を登っていった。




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