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smashing! モテがモテるひけつとは

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。

ここのところ少し暖かな陽気が続いている。厚着がちょっと苦手な佐久間と喜多村は上機嫌である。窓に結露たまってないし肩は凝らないしいいことづくめ。

ただ、暖かい日の次は高確率で雨が降るものだ。それを見越して、朝診前から大洗濯と布団干し決行。幸いこの家には干し場はたくさんある。屋上なんかだと冬でも大体2巡は干せる。洗濯大好きな喜多村が嬉しそうにしている。たしかに畳むのは面倒だが、なんての?あの達成感?カラッと乾いた洗濯物の山にダイブしてみたいとは思っているが、さすがにまだやったことはない。

最近その洗濯物の中に、見慣れない下着やシャツなんかが増えた。おそらく多分いや確定で伊達軍団の誰かのやつ。リビングのローチェストやソファーの脇の収納バスケットは、週一でやってくる伊達の「おどうぐばこ」になっており、私物がわんさか。その中に畳んだ洗濯物も入れておいてやる。

「なんか雅宗先輩、パンツがハデなったなあ」
「前って黒とかばっかだったな」
「そうそ…なんで鬼丸も知ってるんだ」

あの人、どこででも平気で着替えてたからさ。確かに大体男だったらまずこっそり着替える、てのは少ない気がする。人にもよるだろうが、あまり人の目を意識してないか、または意識しているのか。あの人はどっちなんだろうな。

「気に入ったやつがいると、見せつけてくるタイプ」
「千弦、俺もそう思った」
「だよな。俺らの目の前ですげえ着替えてた」

露出イコール好意。ストレートな愛情表現のなかでもほんと、あの人のは危なっかしいんだ。受け取り方は人それぞれだけど、それなりの勘違いも大いにされる。ただあの人の凄いとこは、そんなの気にしちゃいないってことだ。その時、伊達の「おどうぐばこ」の中を片付けていた喜多村が底の方にあったあるものを見つけた。

ー せいとんしてくれてありがとね!ー

そこには佐久間と喜多村に宛てたと思われる、走り書きがされた封筒。何?何が入ってんの?恐る恐る封筒を開け、喜多村が思わず笑い出す。

「焼き肉…お食事券だって鬼丸!」
「これジョジョの苑のやつじゃん千弦ううう!タナボタだ!」
「えちょっとすげえ嬉しいなあ!」

好意イコール誠意。あえて受け取りにくいものを渡してこない。これだからあの人は小洒落てるとかでモテるのかもな。俺モテたことないからわっかんないなあ。喜多村がお食事券を佐久間に渡しながら笑う。

「そんなの、気づいてないだけだ」
「鬼丸は優しいなあ」

いいんだよ千弦は俺にモテてれば。強気に言ってからの照れっていう佐久間の二段変形技。喜多村はなんとか「魔神化」を抑えつつ、佐久間を羽交い締めにする。嬉しいなだって。それって。

「俺は鬼丸にモテまくってるってことだな!」

モテる人は、モテる人々に贈り物しがち。とかどっかで聞いたことあるけど、伊達のように華やかな遍歴でもないけど、俺らはお互いにモテてればいい。喜多村はいろいろ気づかなくてもいい。そろそろ二人ともども抑えられない頃合い。せっかくのお食事券はそっとテーブルの上に移動させて。


目の前のモテ男の重みを感触を、互いに何度も確かめる。


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