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smashing! こころのおくのシンクロで

大学付属動物病院獣医師・設楽泰司。週一で佐久間イヌネコ病院に出向している理学療法士・伊達雅宗は彼の先輩で恋人だ。


一晩かけてゆっくり、そんな寝方をすることはほぼない。狭いとこや風呂ん中が主で、手早く、だけどその分じっくり味わう。大学の頃からの付き合いで、しかも特に付き合ったりもしてなかった。それでもお互いに気持ちいことしたい、てのは合致してたから、うっかりそういう仲になってからもこの「ファストフードみ」は変わってない。

家の中では雲母さんに伊達さんの所有権、つったら変だけど、当然全面的に預けている。あの二人には時間かけて目眩いてもらって、オレはその合間合間に伊達さんにちょっかい出す、そんなスタンスになってるから、取った取らないもない、譲り合うこともない。伊達さんも自由を選べるし。受け取り方の違いはこんなふうに、サンカクな関係をまるく収めてくれている。

伊達さんは確かにオレの全て(的なやつ)だけど、オレ自身ではない。なんだろな、同化してる感覚だろうか。同じひとつに近いけど、それぞれ反応する所が違うもの。

荊の茎には花、青を覆うのは雲、水をさざめかせるのは風。思い当たる添え物のそれぞれには、この人のは当てはまらない。花の代わりに蔓が、雲かと思えば虹、水に波紋を描くのは水鳥。同じシチュエーションでも意識の向け方は無限。その微妙な匙加減が、伊達さんとオレを繋ぎ止める何かなんだと思う。

お前は何も気にしないとこあるんよね。脱ぎ散らかした服を足先で手繰り寄せて、伊達さんが笑いながら言う。伊達さんのことはいつも気にしてます。まあそんでいいや、見上げた顔からオレの顎先にキス。オレはいつも伊達さんの動向を、目線の先を見ている。そして伊達さんはオレの何を見てるのか、というと。

そりゃいつもみたいに身体を嬉しそうに見てくるのも大アリだけど、顔、そうだな、目しか見てない。だからか、気持ちにシンクロしてくるその速さが、尋常じゃない。キスから続いて胸元に降りてくその唇を感じながら、今更気がついた。この人の心はいつもオレたちのどこかにある細やかなところに、知らず知らずに同調しているんだ。


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