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smashing! せいかいはいつもここに

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗。彼は佐久間の病院の経理担当である税理士・雲母春己と、伊達の後輩・設楽泰司の恋人だ。


側に来て欲しい、そういった意思表示をすることなく、ともすれば何も欲しない求めない。気ままに流れてく。オレがずっと持ってた伊達さんの印象。

あれだ、何でも付き合ってみないと分かんない。それも一緒に住むレベルで。付き合い始めに一緒に旅行行ったりすると別れる、みたいなこと聞くけど、その延長線上なのかもしれない。

一見隙間なくくっついてイチャこいてるんだけど、基本、伊達さんは一人を好む。誰もいない上での個じゃなくて、オレらがいる上で、その場を客観的に見て取れる位置にいる。見張られる、そういった意味合いよりももっと、手のひらで転がされるイメージだ。

その分オレらに対する信頼が半端ないのか、呑んで眠くなったらどこでも落ちるし、家中の鍵かけずにそのまま暮らしてたりするし。部屋も荷物も全然オープンだ。平屋の離れにある書斎みたいな部屋、伊達さんの昔の物が置かれているんだけど、そこももう全然ノーガード。今じゃオレが好き勝手覗いても探しても寝てても何も言わない。

身を預けることが信頼されている証だとしたら、オレはどうなんだろうな、雲母さんと買い物行った時にそれとなく聞いてみたけど、設楽くんの感じる世界が本物だと思います、そう言われて、そうなのかな、と。取り巻く世界は、人それぞれだ。好きな世界を無意識で選んでいるのだとしたら、三人でいるこここそが、オレの理想郷なんだろう。こうなりたい、そう思って辿り着いたのではない、それでもきっと、伊達さんと知り合った時から、望んでいたのは「束縛」でなく「信頼」だったんだ。

言わなくても察することができる、それもある意味幸福。でもちょっとだけ我儘言わせてもらうなら、言ってほしい。側にいてくれ、そんな直接的な言葉を。

そろそろ夕飯でも作るか、冷蔵庫の豚バラで何をしようか。今日もソファーでお腹出して寝こける我が主君を横目に、まあいいかこのままでも、そんなふうにこの場所にいる伊達さんごと、受け入れている自分がいるんだ。



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