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佐久間イヌネコ病院 luv.50 フレキシブル男子

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設楽は、どこにいるのか分からないくらいに気配がない。俺の家とか雲母ハルちゃんの家とかで、一緒に住み始めた頃はちょっとだけ緊張してたり、気を遣ってたりしたけどそれも数日で、そのうちどこででも横になって寝ちゃうくらい、すっと空間と雰囲気に溶け込んでる。

設楽は家族が多くて、聞いたら親戚や仕事関係の人含めて最多で15人くらい家にいたらしい。設楽の実家はかなり広い方だなと思ったけど、そん時は6人兄弟が2部屋くらいに詰め込まれてたって、狭いよね。

俺って距離感バグッてるてよく言われるんだけど、その事情のせいかな、設楽の場合はゼロなんよ、距離感が。ただ自分からはそんなに詰めてこない。その代わり相手がどんだけ近寄ってきても、すんなり受け入れて同化する感じね。

今日の拠点はハルちゃん家。街中けっこう便利。ハルちゃんが帰りに買い物してきてくれるって言うんで、早あがりだった俺と設楽は家でダラダ…や、ゆっくりしてたのよ。夕方くらいに、設楽が腹が減りましたって言うから、ちょうど割引券とか持ってたんでピザ取って。千弦んとこから持ってきたブルーレイ(未開封)観たり、夕ご飯仕込んだり。

設楽は隣にいる俺よりブルーレイのほうに夢中になってるせいか、いつにも増して無防備全開でソファーに同化してる。ピザ食いかけでずっと画面に釘付け。その間ピクリともしない。フリーズしてんのかと思って軽く脇をつついたりすると、よく大型犬がやるやつみたいに、目線だけがこっち見て目尻が細くなる。

「…ピザうまい?」
「あ、忘れてました。冷めちゃったな…」
「よこしなほら。とっかえてやっから」
「すいません」

取り替えた冷めたピザを俺がそのまま食うと、驚いたらしい設楽が二度見してくる。伊達さんこそこのあったかいほうのピザを。渡したばかりのそれを俺にぎゅうぎゅうと押し付けてくる。

「俺は冷めたんがいいのよう」
「あったかいほうが美味しいから」
「だから設楽にあげたのに」

じゃあ、オレはこっちをもらいます。設楽はピザ片を皿に置き、そのまま鼻ぶつける勢いで俺にキスしてきた。いーまーいろんなソースついてんのにい!!!問題ないです若いんで。喉の奥で笑いながら顔中擦り付けてペロペロしてくる。犬!それワンちゃんのやつう!

「冷めててもあったかくても、伊達さんならどっちもいけます」

って、周りピザソースだらけのやつが何を言うんよねえ。




/伊達雅宗

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佐久間イヌネコ病院
焼酎のお湯割りが定番ですが
こう寒いとどうしても
熱燗が呑みたくなりますね
日本酒といえば伊達さんが
いろんなツテを持っているので
ストック豊富で助かります

ウチの冷凍庫には
作った覚えのない
酒の肴やらアジアンやら
そらもうみっしり入ってる

(院長)


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