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smashing! たいせつはあまくやさしく

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして伊達は後輩の設楽泰司とも恋人同士。



とても前日前々日、人ん家で過ごしたとは思えないような全回復感。佐久間と千弦ん家ってのはもはや俺たちの家。ホームスイートホーム。設楽と俺はうんと食ってうんと遊んでうんと掃除してそのまま出勤した。

今日は早番という名の普通の夕方上がり。猫計って犬計って珍しいフェネックも計って。俺体重しか計ってなくない?ほぼ予防注射ですから。設楽はひたすら直腸体温係。看護士の子が足らなくて、それにしても手際いいねえプロだわ直腸の。言い終わる前に足先踏まれた。重い。

昼飯食ってちょっとコーヒー飲んだらもう終わりだった。アレもう終わり?今日わりと押してましたから。全然気づかなかったわ時間の流れ。設楽がちょっと首を傾げて、伊達さん先に車行っててください、そんなこというなんて珍しいねえ。引き継ぎだけして俺は先に駐車場に向かう。

車ん中で30分くらいゲームしてたら設楽がようやく来た。お待たせしました、いきなりデコに手のひらが押し当てられた。少し熱い気がします、設楽がスポドリ渡してきながら呟いた。佐久間さん家で伊達さんあんま寝てなかった気がするから、それお互い様だと思うけどねえ。自分でも気づかなかった微妙な変調までわかっちゃう、設楽は大家族で育った分、一緒にいる相手への観察眼も鋭いんだな。

今夜ゆっくり休めば大丈夫だよ、貰ったスポドリ流し込んで、シートで伸びをして目を閉じる。そう言われると少し眠気がきたかな、つい俺もはしゃいじゃって寝るの惜しんだりするんよね。人ん家で夜更かしとか楽しいから。設楽なんでもやってくれちゃうし。ああ俺は甘えてるんだなあ、設楽に、そんでこれから家戻ったらおかえりなさいしてくれるハルちゃんに。

こんな無防備で横になってんのに、珍しく設楽がなんもしてこない。チラ見したら真面目に運転してる。夕暮れの街の雑踏、淡い光に映える横顔。なんかの映画見てるみたいな。いいねえ見惚れる。湧き上がったそんな甘い感情を心の中で転がしながら、設楽にわかんないように小さく笑った。



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