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smashing! ジャッジしないしあわせを

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして二人と一緒に住み始めたのは伊達の後輩で恋人、設楽泰司。


今日は外で雲母ハルちゃんと待ち合わせ。待ち合わせていうか迎え行ってご飯食べて、な流れね。ハルちゃんのいつもの仕事場、コワーキングスペースの休憩所で座って、ハルちゃんが終わるのを待つ。いつもだったらすぐ側まで行ってソファー座っとくんだけど、ちょっと忙しそうだからねえ、ハルちゃんは忙しいからって苛立ったりは全然しないんだけど、集中力が増しすぎて周りが見えなくなるトランス状態みたいになる。ああだからこういうとこで作業するんだな、周りの雑音に影響されない働き方。

ほんの小一時間、休憩室の意外と座り心地のいいスチールチェアでゲームしてたら、ふわっと後ろからバックハグ。お待たせしました、猫の素早さで頬に掠めるキス。お疲れね、ハルちゃんいい匂いする。

設楽は今実家に戻ってるから、二人で夕ご飯食べて帰ろっか。デートですね、ハルちゃんは突発イベントが大好きなのですごく嬉しそう。外食は久しぶりな俺ら、緩く繋いだ指先を弾ませる。ハルちゃんは珍しくヴィンテージジーンズにパーカー、薄手のジャケット。作業の日でしたから。ラフな格好も実にいいよね。今日は俺もラフなやつ(いつもの)だから、そこはかとなくお揃い感が滲み出るよね。

駅前抜けていつもとは違うアーケード街を進むと、同時に目についたらしい看板は韓国料理の。店の中は黒っぽい内装と赤が効いててカッコいい。奥に少し広めの座敷があってそこに落ち着いた。未だにチャプチェとプルコギの差が明確でない俺は、コチュジャンかかってらたらいっか、程度の韓国料理好き。僕今日はジャージャー麺な気分なんです。混ぜ混ぜのピリ辛のあれは俺も大好き。プルコギやらダッカルビやら、あとはジャージャー麺。と、すごいお刺身のいいのがあった。コチュジャンとお酢を混ぜたタレで食べるんよ。

混ぜてゾルゾル音立てて、あんまりお行儀よく食べられないけどうんまいねえ。徒歩だからcassもいっちゃおう。このビール何にでも合うわ。どんなジャンクなやつでもハルちゃんが食べるとするするーっと従順…てか上品になっちゃう。食べ方が綺麗なんだろね。すすっても音出ないし。そんで俺の口の周りについちゃったやつをそっと拭いてくれる。

この席は他のお客さんから死角ぽくなってて、すごくゆったりできる。今度設楽とか佐久間も連れてこないと。あでも千弦が既にリサーチしてるかもねえ。ハルちゃんと隣り合わせで、トッポギとか食べさせあって。僕ここのお料理気に入りました、うっすらとハルちゃんの目元が赤くなってる。あれ珍しい、ビール久しぶりだったもんねえ。

料理とビールをも少し追加して、すげえ満足して店を出た。まだこんな夕方早く、涼しくなって気持ちいですね、ハルちゃんと腕組んでふわふわと足元軽く、飛ぶようにアスファルトの白線を踏んでく。辺りに誰かいてもいなくても、ハルちゃんはおかまいなしに俺にキスする。あでもちゃんと軽いやつよ?触れるだけの戯れ合いを繰り返しながら、ハルちゃんのペントハウスを目指して。

腕を離さなくていい幸福、このまま二人で直通エレベーターに雪崩れ込める背徳感。降りればそこからは完全プライベートフロア。流石に廊下でそうなったことはないけど、いつかやりそうで怖いわ、って。

俺とハルちゃんはどんなはしたないことも上品なことも、ジャッジしないで平等に楽しんでいける。そんな気がするんよ。




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