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smashing! つめたさもあたたかくて

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。本日は土曜により午後からは休診です。


今日は朝から雪に見舞われ、病院の周りは真っ白に覆われた。辺りの様子見に屋上へ上がった喜多村の歓声が聞こえる。

「鬼丸!雪すげえ雪!!!屋上すごい積もってる!」
「え待って、そこでちょっと酒呑みたい!」
「冬のデイキャンプだな!実際行くと大変だもんな!」

二人とも最近デイキャンプに行けてなく、庭という名の屋外駐車場で焚き火したりするくらいだった。冬は気候が安定しないから色々大変なのだ。それが今日、なんと家の屋上でしかも雪を愛でながらのプチデイキャンプ。キャンプ違うけど。雪は止んだし風もない。喜多村は防寒具やらコッヘルなんかを持ち出し、佐久間は佐久間で簡易ガスコンロと焼き網を用意。肉焼いて芋焼いて食うんだ!実は佐久間も「アウトドアごっこ」大好き。
ぱっと来てさっと撤収できて、階下まですぐ物も取りに行ける。自宅だし。安心安全、雪の屋上デイキャンプ最高。すると何やらカンカンと、外階段から足音が響く。

「メリーおしょうがつうううう!!」
「こんにちはお二人とも〜!」

閉め忘れていた外階段から現れたのは伊達雅宗&雲母春己カプ。もお終わってますよホリデーは。なんか手繋いだまま二人で笑い転げている。明らかにフラフラしてるおかしい。二人ともちゃんとしたスーツにコート姿…てかよくここまでたどり着いたな。

「うっわ雅宗先輩ヘベレケじゃん!あーあハルちゃんも」
「…なにそんなご機嫌で〜!こっちおいでよ二人とも」

佐久間に促されてハンギングパラソルの下の椅子に移動。わあキャンプだキャンプううう。伊達の言葉より先に皿に乗っかった炙りソーセージ類、そして歓迎の酒が出された。佐久間は仕事が早い。

「昼から雪見て呑める贅沢たまんないねえ〜」
「てか雅宗先輩とハルちゃんはなんかの帰り?」
「お得意様のところでご馳走していただけて」

俺も一緒に付いてったのよ〜!コートの上から更に佐久間に渡されたゴアテックス系で身を包んだ伊達は、半分雲母に体を預けてチューハイを開けた。

「…ハルちゃんがお得意様に、パートナーですって紹介してくれたん!」
「…ンフフフ…もちろんですよ伊達さん♡♡」
「ウヒ♡♡♡」

佐久間と喜多村は突然巻き起こった熱風に翻弄されながら、それでも雪のデイキャンプを再開。既に出来上がっていたためにチューハイ半分で落ちかかり気味の伊達が、佐久間と雲母ににじり寄りなんかセクハラ的なことを始めた。そんなはしゃいでいるように見えても。

伊達のいつもよく磨かれている筈の革靴は、溶けかかった雪で覆われている。

「けっこう遠くまで行ったんだな、雅宗先輩」

喜多村は雲母の、伊達と同じような靴先を見て、嬉しそうに笑った。





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