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smashing! おれらのバランスのみょう

佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。この病院の税理士・雲母春己は二人の先輩である理学療法士・伊達雅宗と付き合っていて、そして伊達の彼氏になった設楽泰司も一緒に、三人で暮らしている。


賢者タイムがただただ至福の時間でしかない、俺とハルちゃんはいつもそんな感じだ。そういった欲や甘酸っぱい感情なんかをね、こう、一気に出し尽くすと殆どの人間って賢者なるじゃん、冷静ていうか無になるて言うか。ハルちゃんとはそれがない。

今日は二人きり。お互い急くように服を剥いで絡み合うようにベッド縺れこんで、会話もなくただひたすらに追い上げるような、そんな繋がり方をすることがある。いつもなら主導権はハルちゃんだったりするけど、ハルちゃんがもう「好きにして」状態で俺に縋りついたまま任せきりになる時もある。本能が勝ってるような精神状態なんかな、動物的な。俺らの為す行為はそりゃ生命の原理とやらからは外れてはいるんだけど、心を繋げる、あいしあう、そんなのはヒトにしかできない事なんだよ。

ちょっとだけクールダウンした身体で、ハルちゃんはうっとりと目を閉じて微笑んでいる。ダウンライトでここまで綺麗だったら照明全部点けちゃたら俺終了しちゃうかもねえ。視覚で全部持ってかれるのわかる。フェザーケット引き上げて、ハルちゃんごと抱きしめて。喉の奥で小さく笑って腕を回される。そういえば冷蔵庫にチェリータルトを隠してあるんです。なにそれ俺の大好物ん。カスタードとブラックチェリーをこれでもかと乗っけた至福の味を思い出すと、あかんわ二人して寝てもいられなくなってきた。

いったんタルト食べにいきましょうか。笑いながらハルちゃんが俺を抱っこしながら起き上がる。じゃあ食べたら続きにしよ。部屋着羽織ってリビング行って、冷蔵庫覗いたら設楽がオレンジのゼリー作っといてくれてた。いいねえこれも持ってこ。ゼリーはちゃんと人数分、タルトの箱開けたらこれまた人数分。何でもかんでも三個ずつ。そのうちの二個を出して、設楽の分はきちんと仕舞っといてやる。冷えたシャンパンとグラスを手に、リビングで待ってるハルちゃんとこへ。

愛し合うのは二人ずつ、でも分かち合うのは三人で。俺とハルちゃんと設楽、確かに生命の原理とやらからは最も遠いとこにいたりするけど、このバランスがね、俺らには丁度いいんだよね。


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