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THE GAZETTEを読む(22)2016年10月号 企業の創造性を高めるイノベーション・ラボ

 本記事は、ラスムセン・コンサルティングが発行しているメールマガジンTHE GAZETTEのバックナンバーを、日本語訳をしながら、コメントを加えながら読んでいくシリーズの一つである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎(LSP)のファシリテーター・トレーニング修了者向けに書いている。
 この記事の引用元原文はこちらのPDFから読むことができる。

 今号では企業の創造性をレゴ®︎シリアスプレイ®︎でどう引き出したかの事例を中心に書かれている。

 私たちは皆、安定した文化がしばしば変化に抵抗することを経験しています。IBM から Fidelity Investments まで、さまざまな最先端企業が、革新的なプロセスや製品を織り込みながら、自社の優れた点を維持するための戦略を成功させています。

THE GAZETTE 2016年10月号をDeepLで翻訳・筆者が修正

 Fidelity Investmentsはアメリカを代表する投資信託の販売会社である。抱える顧客は2500万を超え、従業員も4万5千人を超えている。大企業だからといって安定しているわけではなく、大企業で多額の資金を取り扱うからこそ環境の変化からの影響は大きく、競合からの圧力も強い。

空間を創る、プロセスを開発する

 多くの企業は実践的な学習のためのワークスペースを確保することからイノベーションの成功が始まることを発見しています。このようなスペースはラボ、イノベーションスペース、ハッカースペース、DIY、メイカースペースなどと呼ばれることがあります。これらの「メイカースペース」はレゴブロックを含むさまざまなビジュアル、またはデザイン思考ツールを備えています。多くの場合、新しい製品やサービスのアイデアは、これらのメイカースペースで吟味され、開発されます。

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 大企業の中でイノベーションを起こしていくために、特別な「スペース」を用意するという方法は良く取られる方法である。以前に筆者の記事で扱った「フューチャー・センター」もその1つだということができる。自社の事業や製品・サービスを強化・革新するアイデアをそこで生み出していく投資をしっかりとしているというわけである。

Fidelity Labsでのこと

 先日、Fidelity Labs(Fidelityのメイカースペース)のリーダー数名が、LEGO SERIOUS PLAYのファシリテーター・トレーニングに参加しました。彼らがLSPの手法をどのようにイノベーションに活かしているのか気になり、Fidelity Labsのボストンのラボを訪ねました。
 Fidelity社のデザイン思考担当副社長であるSuzanne Hamill氏によると、Fidelity Labsは約20年の歴史があり、Fidelity Investments社のイノベーション部門であるとのことです。現在、ラボの中心は、新しいプロダクトをデザインするチームを収容し、サポートすることです。このプロダクト・チームのコンセプトは非常に成功しており、ラボのフロアにある会議室はチームによって占拠されているほどです。
 ラボでは、チームを中心とした新製品開発プロセスを1つのチームからスタートさせ、時間をかけてプログラムを拡大してきました。このラボで生まれた2つの新製品は、家族の重要な文書をデジタル化して保管する安全なサイバー金庫と、ユーザー重視の電話応対システムです。
 LSPの手法の適用について尋ねたところ、Fidelity社は、意図的に多様となっている製品開発チームの中の諸目標を調整し、固めるためにこのプロセスを利用しているとのことです。

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 単にLSPを導入するというだけでなく、LSPの力を最大限引き出すために、多様性をもつようなチーム編成をするという下地を整えている点に注目したい。横のコラムには、チームメンバーの多様性をさらに引き出すための取り組みが写真と共に紹介されている。

また、チームメンバーは、定義されたターゲット層内の潜在顧客と幅広く交流しています。LSPのプロセスは、お客様が深く抱く信念を探るために使われてきました。

 参加するメンバーにも普段から多様な顧客の声を集めさせている、というのはワークショップを設計・提案する側にとっても頭に入れておきたい方法の一つである。

成功事例

 Fidelity社のデザインストラテジストであるChristine Wheatleyが指導したあるLSPのワークショップでは、弁護士を雇う際に何が重要なのかを検討しました。サービス開発チームは、資産形成を支援する製品の設計を任されていました。
 その過程で障害となっていたのが、弁護士を探して雇うことです。出身校や経験年数といった従来の情報では、弁護士選びをサポートしきれないようです。ワークショップには、お客様のさまざまな側面のことを考えて、Fidelity社のなかの多様な社員が招待されました。
 ウォーミングアップのためのビルディング・エクササイズの後、参加者は、弁護士に求める資質についてのストーリーを語るためのモデルを構築するよう求められました。
 Fidelity Labsでは、すべてのワークショップで参加者のフィードバックを求めています。弁護士として重要な資質を定義するワークショップでは、過去最高レベルの評価点を獲得しました。

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 定量的な側面で「良さ」を定義できないとき、定性的な側面から「良さ」を再定義しなければならなくなることが多い。感覚的で、多角的に「良さ」を探らなければならないとき、LSPのワークショップは参加者から、その「良さ」についての潜在的な知識を引き出すことに向いている。横のコラムには、そのワークショップで出されたとみられる意見が写真と共に紹介されている。

ある若い女性は、育児に制約があるため、柔軟に往診してくれる弁護士を希望していました。また、他の専門家とのネットワークがある弁護士を希望する人もいました。

 このような声を掬い上げ、とりまとめていくことによって、顧客にとって良い弁護士を再定義し、新たな商品・サービスの提供につなげていくということである。イマジネーションを最大限に膨らませ常識を打ち破る方法もあるが、顧客視点や従業員感覚の多様性をうまく引き出すことも非常に有力なレゴ®︎シリアスプレイ®︎を使ったイノベーション手法だと考えられる。

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