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レゴ®︎シリアスプレイ®︎で「考える力」を高める

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークを繰り返していくと、思考力そのものが伸びていく、もしくは、レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークを考えるべきテーマに当てはめていくと、自転車の補助輪のように、うまく考えるための補助になる、というのが私が今最も関心をもっている仮説で、論理的にも実証的にも確かめたいと日々苦闘している。

 「考える力」は私に限らず、これからの日本の未来を考えていく際にも重要だとして、広く関心を集めるキーワードであると感じる。

 そんな中で出会った上記の本では、「考える力」を高めるための重要なコンセプトとすぐにでも導入できる具体的な手法が紹介されている。

 この本で掲げている「考える力」を伸ばす方法の基本図は以下の通りである。

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 「振り返り」は経験と行動で得たものを、意味づける役割を果たす。何があったかから始まり、最終的には自分自身についての理解を深め、評価を更新する(〜ができる、〜が好き、もっと〜できそうetc.)というところがポイントである。

 「メタ認知」は、自己評価に基づき、どのような狙いでどんな行動をとるのかを決めるプロセスである。「目標設定」と理解した方がわかりやすいが、敢えて言う表現を使っていないのは、自分で自分の行動を定める側面を強調しているからである。

 非常に似ている図として、デービット・コルヴの経験学習モデルがあるが、この本の図のほうが「自分で考える」という側面をより重視したものになっている。その理由として、自己評価に至る振り返りや次の行動を決める目標設定を他の人に依存してしまうと、他の人がいなくなった場面では学習が進まなくなるからである。それは教室外(より正確にいえば教員がいない場面での)応用が効かないということである。

 教員は自分の受け持つ授業の中で、子どもたちが立派に振る舞うことに満足するが、教室外で知識を使えているかどうかに無関心になりがちだ(責任範囲外だと考えているだろう)。授業の中に責任が限定されるなら、評価や目標設定は教師がしたほうが良い(効率的)と考える教員がでても不思議ではない。

 この本では、自分もしくは子ども同士助け合って自分たちで振り返りを行い、どうすればよいか次の学びの目標を設定する方法がいくつか紹介されている。その中でも中核になるのが「自問」と「質問」である。良い問いをなげかけられるようになると「振り返り」と「メタ認知」が良質なものになり、経験や行動からより多くの知識・高い技能・良い態度・適切な価値を得ることができていくとともに、それらが過去の自分や未来の自分とどう関わり合うかを強く意識できる。結果としてその人の「考える力」が高まるのである。

 なお、別の記事ではドナルド・ショーンの省察的実践家の議論も紹介したことがある。ショーンの研究の場合には、高度な知識や技術をもちそれでも難しい問題解決に向かう仕事をしている人を想定しているが、自らの体験について現場を離れて振り返る(reflection on action)ということと「振り返り」「メタ認知」のサイクルの考え方は、ほぼ重なっている。「考える力」を育てることと問題解決のプロフェッショナルになることは地続きなのである。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークと「考える力」

 この本で述べられている「振り返り」と「メタ認知」は、レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークショップと非常に相性がいい。

 さまざまなレゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークの展開方法が考えられるが、そのなかでも、ある「経験や行動」から自分にとって何が学べたかというテーマで作品をつくってもらう(Aパターン)、のはわかりやすく、取り組みやすい方法である。よくあるパターンが映画を見たり、講演を聞いたり、体験ゲームなどをしたあとに、ブロックで「私の学び」を作品にしてもらうというものだ。

 また、「現在の自分の状況」をモデルにしたのち、その中に最近の「経験や行動」がどう表現されているかを説明してもらってもいい(Bパターン)。別の記事で、モデルによる定点観測をお勧めしたことがあるが、それがここにもまさに当てはまる。

 上記の2つのいずれもが「振り返り」部分に相当する。

 「メタ認知」については、上記の「振り返り」で作った作品を使いながら、追加的に行うのがよいだろう。つまり「今回の学びを次のアクションにどうつなげていきますか。もっと学んで行った方がいいことは何ですか。」と自分のモデルに問いかけるのだ。「自問」であってもいいし、複数名でグループを組んで、それぞれが作品をつくり、お互いの作品に「質問」しあってもいい。

定点観測20220322

 上記の写真はBパターンで、定点観測的に自分の状況(2022年3月22日時点)について作ったものだ。手前の方に人形があるがそれが私で、次から次に仕事がやってきて、新年度の準備が十分にできずあたふたしている。その先に見えているのは、新年度が始まってからでもいろいろなことにチャレンジしたいと言う気持ちである。ただ、そこにいく前の準備ができていない感があり、同じところをぐるぐる回っている感じで先に進めていない。これが最近の経験と行動からの「振り返り」=自己評価である。

 奥の方にブロックが散らかったように置かれているが、その部分は「メタ認知」つまり「これから何をしていくべきか」を自問した中で出てきた表現である。つまり作品の手前部分が「振り返り」(経験と行動→自己評価)で、奥部分が「メタ認知」(自己評価→次にとるべき行動・学ぶべきこと)となっている。

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークでは、「振り返り」と「メタ認知」を設計に組み込みやすい。それが「考える力」のベースを作ることにつながると、上記の『「考える力」はこうしてつける』は教えてくれている。

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